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第六十五章 情事日程その二

09 芽吹きました

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 会議終了後、ハウスキーパー、レディーズ・メイド、そして首席女官長と私の四人で恒例のお茶会です。
 このお茶会は、密かに最高女子会などと呼ばれているそうです。

「お嬢様、見事な手腕でした、それに側女も順調にこなされて、後はヘレンとレイラだけですが、後一人イーゼルの側女の追加が必要ですね。」
「私も寵妃が増えるのは、賛成ではありませんが仕方ありません。」
 と、サリーさんがいいます。

「そうですわね、サリー様のいう通り、あと一人」
「バーバラ女官長に伝えておきます。」
 と、アンリエッタさん。

「ところでアンリエッタさん、皆、歓迎していますよ。」
 と、アナスタシアさんが声をかけています。
 そこへ姉がやってきました。

「おや、偉い方が集まってなんのお話。」
 一番偉いのは貴女でしょう?

「佳人の話しをしていたのです。」
「平和ですね、でもヒロトが命がけで守ったエラム、少なくとも無いだろう明日を、創りだしたのですから、平和に酔いしれても当然でしょう。」
「喜んでもらわなければね。」

「良い機会です、黒の女神としていっておきますが、エラムのことは試練です。」
「これからヒロトと一緒に、何かをしなければならないでしょう、その時このエラムが家になります。」
「この宇宙、三千世界に対して、何らかの影響力をふるう時、疲れをいやす家、それがエラムなのです。」

「これは私の妄想です、このお菓子、おいしそうですね、頂きますね、マレーネと食べましょう。」
 イシス姉さん……

「お嬢様……」
「姉はできるだけのことは云ってくれたのです、これ以上、私からも付け加えることはありません、ただエラムが家というのは初耳でした。」

 アンリエッタさんが、
「本当に迷いがなくなりました、女神様は私にも大事なことをおっしゃって……」

「この話はここまでです、私たちはお茶をしていた、いいですね。」
「はい!」
「よい返事です。」

「カルシュにでも行ってきます、だれか一緒に行きますか。」
 サリーさんとアナスタシアさんは、いそいそと立ちあがりますが、アンリエッタさんは悔しそうに、
「どうしても抜けれない仕事がシビルであって……」
「そうですか、では三人でカルシュへ繰り出しましょう。」

 三人で行きつけの、カルシュ・ヴィーナス劇場の前の茶館で、優雅にお茶の続きです。
「お嬢様、ヘレンの件は明日でしょう、ということは久しぶりの散策ですか?」

「たまには息抜きもいいでしょう、黒の巫女とハウスキーパーとレディーズ・メイドで楽しみましょう。」
「それに二人とも懐かしいでしょう、あの頃は楽しかったですね。」

「そうですね、劇場は夜からですし、どこかに早めに宿でも取って、遊びに出ましょう。」
 警備の良い、高い宿に部屋をとりました。

「宿泊は三名様ですか?」
「そうです、いい部屋ありますか?」
「あいにく二人用の部屋しか空いてませんが、よろしければ簡易ベッドを一ついれて、大きなベッドにいたしますが、いががで。」

 アナスタシアさんが、
「女同士ですから、それでいいですよ。」
 と、満面の笑みで答えます、サリーさんはというと、嬉しそうです。
 三人で一つのべット、その心は、エッチ・エッチ・エッチなのでしょうか。

「劇場のチケットは手に入りますか?」
「幸いキャンセルがありますので、それを回せますが、お高いですよ。」

「構いませんよ、所で前払いをしておきましょう、不安でしょう?」
「それは……ご丁寧に。」

 隣で女の人が算盤を使って計算しています。
「それはなんですか?」
「算盤というものです……ヴィーナス先生、アナスタシアさんも!」
 教え子さんの一人でした。

 少なくとも算盤と、それを使う女性の社会進出……
 蒔いた種が芽を出していたのです、嬉しいものです。

 部屋に荷物を置いて、鍵をかけて、その昔の屋台村へ出かけますと、昔のように復活していました。
 人力の遊園地も同じようにあります。

 散々ファーストフードを食べ歩きしながら、三人でキャアキャアと騒ぎました。
 アナスタシアさんなど、たがが外れています。
 私は警戒しながらも楽しんでいます、カルシュの町の復興を心の底より喜びました。

 劇場では、恋愛物の演劇を演じていました。
 私は面白くなかったのですが、二人は……
 そこはやはり生まれた時からの女性、見いっていましたね。

 今日はカルシュに来て良かった。
 算盤が根付いていたのですから。
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