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第六十章 黒の巫女ってなんでしょう

06 イシスの想い

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 やはり創造の女神はイシス、前任のヴァルナ評議会議長、そして私はこのエラム再生の守護者……

 イシス……
 神々の秘密を知る、偉大なる女魔術師、王(ファラオ)を養い育てる女神。
 イシスの名を示す神聖文字には、玉座を示す絵文字も含まれている。

 イシスさんは、このエラムを再生させたかったのでしょう。
 自身が行っては、再生しても一人立ちができない。
 アスラ族は星の母……別の世に移動するのは近かったのでしょう。

 そして後継者としての私に、エラムの指導者層を養い育てる女王、女神として玉座に就くことを望んでいたのでしょう。
 だから監視端末は、あれほど私を女王にしたかったのでしょう。

 処女懐妊、単性生殖は理論的には可能ですし、私の使用する、ナノマシンを駆使すれば、実行できると思えます。
 女性の子宮さえあれば、子孫を複製できるでしょう。

 もっと突っ込んで考えれば、別の女性のDNAを組み込む、遺伝子操作もできると考えられます。
 結論すれば、種族の繁栄に、男性体は不要になります。

 そして出産、つまり子孫繁栄、魔法を使って他の女性を懐妊させる。
 処女懐妊、単性生殖を行うことができる、女魔術師である私に、アスラ族女性体の使命、つまりこのエラムや地球をふくむ、三千世界を守り育てて欲しかったのでしょう。

 とくにエラムは、オーディンが行った恥ずべき行為とその環境により、アスラ族女性体にとっても、理想的な奴隷世界になるのは確実です。
 つまり女同士の愛が許容されなければ、存続出来ない世界です、そして常に支配者を望む世界です。

 しかしそれゆえに、発展のない陰湿で閉塞性の蔓延する世界になると、想像出来たでしょう。
 そのエラムを何とかできれば、その後のヴァルナ評議会議長として、この三千世界というべき、私たちのいる世界も、守り育てることが可能になる。

 エラムは次のヴァルナ評議会議長のための試練の場所、格好の練習場として存続させたかった。
 イシスさんはそう考えたかもしれません。

 端的にいうと、私に神の後釜をせよと、いっているようなものです。
 それをエラムで成し遂げ、その経験より三千世界を守り育てよと、子孫に願がっているのでしょう。

 そもそもヴァルナという名が創造神の名前です。
 創造神であるヴァルナのグループが、世界を去るにあたり、その代表であるイシスが、次の守護者を計画してても不思議ではありません、むしろ必然でしょう。

 私の心に、その考えが確信になりました、そして感じたのです。

 その感じとは、前方を見ている時にも後方が見えるような、すべてを見通せるような感覚、としかいいようのないもの……
 その感覚が、私の前にある知性体をとらえるのです。

 イシスに違いないと感じます。

 明らかに知覚しますが、なにかベールに囲まれているような、形なき者を直視しているというのでしょうか、でもイシスさんに間違いありません。

 『アナーヒター』と呼ばれた気がします。
 『世界をその手に、思うがままに、なすべきをなしなさい、アナーヒター、ヴァルナの娘』
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