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第五十九章 明かされる隠し事
03 『しもべ』と創造主
しおりを挟む『しもべ』さんが目覚めました。
源兵衛さんはリリータウンへ逃げたのか、コンタクトが取れません。
「マスターとお見受けします。」
「こうしてマスターの脳波を近くに感じるのは、電子機器たる私でも、電子が飛び跳ねるようです。」
変わった喜びですね。
「監視端末は、喜びという概念を、私に送信してきましたが、これがその喜びですか?」
「聞きたいことが、山ほどあるのですが、答えてくれますか?」
「どのようなことでもお答えします。」
「確認しますが、貴方はだれですか?」
「私はいま、惑星エラムが所属するこの恒星系のガス惑星、第五惑星の衛星として回っています。」
「建造されたのは遥か古代で、神々が乗っていた移民船自身が、私ともいえます。」
「狭義には、私は『しもべ』と呼ばれた、メインコンピューターで、一個の機械として存在しています。」
「内部には管理点検保守の専用のアンドロイドが100体ほどいます。」
「いままで、エネルギーは太陽光では足りないので、第五惑星の潮汐力で活発化している、他の衛星の、地殻エネルギー、鉱物資源をメインとしていました。」
「この惑星系内なら、移動できるように維持されていましたが、ホワイトホールを出現させた結果、メイン動力、予備動力など、全てのエネルギー源は、復元不能になっていました。」
「しかし、現在はエネルギーもフルチャージ状態、その結果、この宇宙船は先程の管理点検保守の、専用のアンドロイドも復活し、もうすぐ全機能が回復します。」
「なお先程の新しい、予備動力エネルギーだけでも、宇宙内の銀河間航行なら、何ら支障なく稼働できます。」
「この結果、ホワイトホールを出現させても、ある程度の時間をいただければ、フルチャージも可能になり、建造当初より、進化した状態といえます。」
「今までのエネルギーは、予備として緊急使用以外は、すべて惑星エラムの、監視端末の専用エネルギーといたします。」
「この予備エネルギーを使い切ったとしても、この第五惑星にいる現状なら、約3年で充填できます。」
「監視端末の専用なら、使い切れないほどの、エネルギーかと考えられます。」
「マスターがどのようにご使用になられても、大丈夫でしょう。」
「なお、この予備エネルギーは、一天文単位の位置で、太陽光エネルギーだけでチャージすると、50年程度はかかります。」
「以上が私についての概略です。」
「まず貴方を作った人々とは、どんな人たちですか。」
『しもべ』さんは、しゃべりはじめました。
「私も、すべてを知っているわけではありません。」
「なにせ主のことですから、しかし私が作られてからのことは答えられます。」
「主の種族は自らをアスラ族、その指導者はヴァルナとよばれていました。」
ヴァルナ……
ヒンドゥー教の四色の種姓に分割する、宗教的身分制度にもその名前がありますが、この場合、神の名前の方でしょう。
古代のイラン・インドの、神話共有時代における始源神の名です。
たしか、インドのリグ・ヴェーダなどでは、天空神となっています。
イランでは、宇宙の秩序と、人類の倫理を支配する神の名です。
どちらも地球では消えた、神の名でもあります。
たしか契約の神、日本では天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、性別のない独神(ひとりがみ)、世界が出来た時に、高天原に最初に出現した神、宇宙そのもの、創造の最高神、つまり至高の神のお名前です。
アスラとは、これも記憶の片隅ではありますが、インド神話あたりにおける、神族または魔族の総称。
ペルシャにおけるアフラ・マズダー。
漢字を当てると、阿修羅と表記される、つまりは修羅になります。
これまた、すごい名前が出てきました。
「アスラ族の、ヴァルナ評議会はある時、別の宇宙に植民することを決定し、当時の全科学力を結集して、宇宙を渡れる、宇宙間宇宙船たる私を建造したのです。」
「当時、アスラ族の科学技術は、絶頂期にありましたが、種族としては危機的でした。」
「度重なる内紛を、何とかヴァルナ評議会は抑えていたのです。」
「どうして内紛が起こっていたのかは、データーにはありません。」
ふつうなら人口増加の結果、食糧などの生活必要物資が、供給出来なくなったとかでしょうが、これほどの科学力ならそれはないでしょう。
多分、人種としての活力が、なくなって来たのでしょう、自暴自棄が蔓延したと、考えるのが妥当でしょう……
「私は主の種族を乗せて、この惑星エラムへたどり着きました。」
「その目的は、大規模移民のための惑星改造です。」
「主たちは行動を起こし、この惑星エラムを、緑なす水の惑星に変えたのです。」
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