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第五十八章 姉上転移
08 寵妃攻勢 其の二
しおりを挟むさらにイーゼル公館の前庭あたりで、四人の女の子がおしゃまな会話をしています。
「ねえイリーナ、どうしてオルガお姉さまたちと、ドリスお姉さまたちは、仲が悪いのかしら。」
「私たちのように、仲良くすればいいのに、皆、巫女様の女になったのだから。」
と、アンさんが云います。
ペピさんが、
「アンお姉さま、女は欲張りな生き物と、ジーナ叔母さまがいっていましたわ、私もそう思いますわ!」
「そうよ、ペピさんの云う通り、私たちも女、いつも巫女様に可愛がっていただきたい。」
「でもそれは無理なの、綺麗な人ばかりですもの、でも姉上様に好印象をもたれたら、大人になった時、麗人さんも夢ではないわ!」
と、エリーナさんが力を込めていいました。
イリーナさんも、
「アンさん、私たちは若いの、あんな叔母さまたちには負けません!」
「アナスタシア様やサリー様などの、愛人の方々ならいざ知らず、この身体に磨きをかけて、巫女様の時間をより多く、私たちのものにしましょう」
と、花が咲く前庭で、四人のすこし幼い娘たちは、燃えていました。
またその頃、イーゼルのクリスティーナさんの部屋へ、一人の夫人が訪れました。
ホラズムのフランソワーズさんです。
この二人は娘の取り持つ仲で、よく互いの部屋を行き来しています。
「今日はハーブのお茶を用意しましたの、ところでお嬢さん、今日は連れてこられないのですか?」
三歳ぐらいまでは、夫人さんでも連れてこられるのです。
「ヴァランティーヌは乳母にあづけてきました。今日はクリスティーナさんと、お話がしたかったのです。」
「明日の姉上様の件ですか?」
「その件です、実は私、姉上様に娘のことをお願いしたくて……」
「私の夢は、娘と二人で、巫女様の寵妃になりたいのです。」
「このことに対して、姉上さまにご理解を得られないかと……」
それを聞いてクリスティーナさんは、
「確かにチョーカーの魔力なら可能ですし、それが出来れば、エラムの女としては最高の幸せ……」
「私も夢見ることがあります、私と娘のシンディーと二人で、巫女様に夜のご奉仕……」
「考えただけでぞくぞくしますね。」
しかし、クリスティーナさんは、
「でも、巫女様は嫌がられましょうね。」
「そこなんです、姉上様にエラムの女の道、女の幸せのあり方をご説明して、巫女様の間違った考えを、改めていただけるように、お願いしようと思うのです。」
「姉上様のお言葉なら、巫女様もお聞きになられると思うのです。」
と、フランソワーズさんは力説します。
「たしかにそれなら……」
こうしてクリスティーナさんの部屋では、夜遅くまで、良からぬ企みの話し合いが続きました。
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