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第五十八章 姉上転移

05 姉には頭が上がらぬもの

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 歓迎準備も整い、リリータウンに姉がやってくる日が来ました。

 愛人さんたちは、物凄く緊張しています。
 特にヒルダさんは、コチコチで右手と右足を、出して歩いたりしています。
 エラムの八割近くを相手に、戦い抜いた鬼参謀は、どこにいったのでしょうか?

「ヴァカリネ様、どうしましょう?」
「何をどうするのですか?」

「だから私は、どうすればいいのでしょう?」
 これでは会話が成り立ちません、もう……、イライラする。

「ヒルダさん、貴女は私の姉に、この胸とこのお尻を散々触られた女といえばいいのです!!」
「そんな……」

「お姉さま、お姉さまこそ、落ち着いてください。」
 と、アリスさんにたしなめられました。

「そうですね、ビルダさん、ごめんなさいね。」
 ヒルダさんは、それどころではないようです、そわそわして落ち着きません。

「ヒルダさん、こちらへ。」
 と、ヒルダさんを呼び、やってきたヒルダさんを、突然ガバッと抱き締めました。
「おちつきました?」
「はい、ヴァカリネ様」……

「ずるいですね、私も心配で心配で……イシュタル様、抱き締めてくださいませ。」
 アナスタシアさん、近頃、流し目の練習でもしているのですか?
 色っぽいこと、はなはだしいのですが。

 こうなると、お約束の騒動になります。
 ビクトリアさんも、「私も胸の動悸が……、慰めてくれ」
 とかは可愛い方で、ジジさんやミレーヌさんなどは、このごろ大胆なポーズをとりますし、アテネはすぐに服を脱ぐし……

 ドタバタしている所へ
「あら、仲の良いことで、お盛んなのもほどほどに、まだ陽は高いのでしょう。」
 かなりお怒りの姉が立っていました。

「いや、これは……」
 あられもない姿を見られた愛人さんたちは、真っ赤な顔になっています。

「別段、よろしいのですよ、貴女がだれと乳繰り合っていようと。」
 笑顔の姉の怖いこと、どうもキッカワの者は、怒ると笑顔を浮かべるようです。

 その後、
「洋人さん、貴女という人は……、幼いころより……」
 でました、姉の長い長いお説教が、これはまずいです。
 昔の話もでそうです。

「だいたい、貴女はよくおねしょをして、私が……」
 その話はやめてください。
 大体なんでそんな昔を、覚えているのですか、私は覚えてないのに、私の過去をねつ造しているのではありませんか。

 あぁ、もう止まりません。
「小学校の頃は、よく泣きべそをかいて……」
「中学校の頃には、お風呂場を覗いて、警察沙汰に……」
 延々と夕食まで暴露されました。

「サリーさんはいますか?」
「はい、ここにおります。」
「洋人さんは、ちゃんと生活していますか?」
 かわいそうに、サリーさんは根掘り葉掘り尋ねられています。

 でも最後に、
「サリーさん、洋人のお守は大変でしょう、今まで良くしてくれました。」
「申し訳ありませんが、これからも頼みます。」
 と、頭を下げました。

 ここから姉の本領発揮です。
 いわゆる褒め殺しというやつで、サリーさんを持ち上げること、感激屋のサリーさん、これで姉の子分は間違いなしです。
 同じ手法で、アナスタシアさんなど十一人は、すべて姉のシンパになってしまいました。

「女同士ですから、仲良くいたしましょうね。」
 との姉の一言で、やっとこの大演説も終わりました。

 愛人さんたちは、「姉上様、実は」など、私のことを早速姉に報告し始めています。
 勿論、御座所での女官長相手でも、ほぼ同じ場面が繰り返されます。

 百戦錬磨の女官長さんを、いとも簡単に手玉に取っています。
 姉さん、貴女はどんだけすごいのですか?

 歓迎昼食会は、姉の独壇場と化しています、
 言葉は悪いですが、二十二人のやり手婆を相手にですよ……
 女は怖いですね。
 この血が、私にも流れていると思うと……

 アンリエッタさんが甲斐甲斐しくお相手を勤めていますが、例の話を切り出しました。
 冷やっとしましたが、姉は動じません。

「そうですか、郷に入っては郷に従えです、認めますよ。」
「でも人様の妻ですから、妻とは認めませんが良いですね、公式のお妾といたしましょう。」
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