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第五十七章 碑文騒動
07 エラムの戦後
しおりを挟むこのごろ私は、古代レムリアの図書館、通称『霧の底の図書館』で文献を漁っています。
まるでアリスさんですね。
植物波農法が大当たりして、レムリアどころか、エラム各地の農作物の収穫量が向上しだしたのです。
まだ促成農作物でしか、結果は出ていませんが、年単位の作物についても、同様の効果が期待できます。
これで飢える人もすくなくなるでしょう。
イオン水を作る農法は、結局、私の女官さんの、魔法学校における独占事業となり、エラム各地からますます希望者が殺到しています。
女官になるには、奴隷になることになりますが、魔法の能力があり、本人が希望すれば、この魔法学校へ入学するように計らいます。
卒業後は、すぐに女官として働くことになりますが、魔法学校でイオン製造魔法を習得した女官さんは、短期間で自己の代価を支払うことができるようになります。
その後は、各地の官庁などで働くことが出来ます。
とにかく女性の自立の助けになることはいいことです。
また女官捕制度のおかげで、女性の雇用などの目途も立ち、少しですが、このエラムの閉塞状態に、変化がもたらされていると思えます。
なんといっても、女がとても多いのに、女が娼婦以外は働く場所がなく、生産という観点から眺めると、とても非能率ですから。
三つの戦乱で、殿方はかなり減少しているいま、残された女が、このエラムを支えなければなりません。
こういっては何ですが、この非常事態を利用して、女性の社会貢献を、このエラムを構成する社会に認知させようと思っています。
女が多く生まれる、この惑星の環境構成のため、女奴隷が底辺を構成する社会制度は、ある程度はいたしかたないと思いますが……
しかし、このエラムで、女が社会で生産に従事することを、許容するようにならなければ、いつかエラムは崩壊してしまう、そう思えてなりません。
この女官捕制度は、かなりエラム社会に受け入れられることが可能な、良い制度ではありますが……
ここからも側女という、私の寵妃になれるということで、これまた希望者が殺到しています。
ハレムが無限に増殖しそうで、とても怖くて、いまでさえ死にそうなのに、万単位で責められたら……
白旗を上げれば許してくれるのでしょうか……
怖いです。
とても、怖いです。
その恐怖は、取りあえずはおいといて、エラムの諸国家は、三つの戦乱で何らかの影響がでています。
その結果、私は十一の地域の君主を兼ねています。
ただ、ヴィーナス騎士団総裁と教団領の黒の巫女は同じ名前ではありますが、しかし私がエラムの君主ということは、だれもが認めるでしょう。
いまホラズムとパリスは農業王国となっています。
もともとホラズムは、肥沃な平野部で農業が盛んでしたが、パリスは灌漑用水のおかげです。
しかも古代レムリアの農業技術で、ホラズムと同等の食糧生産国となっています。
ハイドリアは鉱工業、パリスの鉄鉱石を水路と海路を使い、コムネノス王国の海岸部まで輸送、輸入しています。
工業も発展を始めています。
まぁ鍛冶屋さん程度ではありますが、もともと金銀の加工が盛んでしたからね。
カルシュとジャバは、商業と金融を住み分けています。
カルシュは文化の中心、ジャバは大陸諸都市の貿易とその手段、つまり物流でも潤っています。
アムリアは軽工業、紡績などが発展して、今ではエラムの中でも先進国です。
牧畜も盛んで、食糧加工品なども、いい物を作っています。
レムリアは食糧自給の目途も立ち、ガラス工芸などのガラス工業が盛んになりました。
また精密なネジや歯車をつくる、精密金属加工業も発展しています。
古代の技術ではありますが、地球の古代ローマの繁栄程度までは行けるでしょう。
あとは人心の腐敗に、気をつけなければなりません。
このことは、諮問会議の宰相さんたちには、ことあるごとに言っています。
黒の巫女同君連合体制は軌道に乗りました。
諮問会議と百合の会議が、このエラムを事実上取り仕切っています。
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