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第五十五章 黒い森の都シュヴァルツヴァルト
05 参謀の処遇
しおりを挟む即位後、レムリア復興の話しになりました。
フリードリッヒさんとカールさんが、「参謀殿がいれば……」と云いました。
どうやらあの参謀は、治世においても辣腕をふるったようです。
納得しますがね。
私は奉仕の魔女団の当番を呼び、参謀を連れて来てもらいました。
ビクトリアさん、小雪さん、アテネさんが一緒です。
フリードリッヒさんが「参謀殿、よくご無事で」、といいます。
「参謀、お名前は?」
「ヒルダ。」
ヒルダさんに趣旨を説明し、協力を要請します。
「私は主席に恩義がある、主席の命令があれば別だが協力は断る。」
フリードリッヒさんが、
「ヒルダ参謀、レムリアの民のために、節を曲げてください。」
「私は、皆を塗炭の苦しみに放り込んだ一員、こうしておめおめと、生き恥をかいているのが恥ずかしい、本当は……」
私はいいます、
「ご立派な心がけだが、命令があればいいのですか。」
「無論だが。」
私は魔法で、主席の最後を写しだしました。
私が見ていた、映像と音声情報を復元します。
ヒルダさんは息をのみました。
「この映像は私の見ていた物、そのままです。」
「何一つごまかしてはいません、保障します。」
「一つお聞きしていいか、電子計算機とはなにか?」
「考える機械といえば、いいのでしょうか、取りあえずは、主席は人ではないということです。」
「……」
ヒルダ参謀が沈黙しています、そして、
「なら私を屈服させてください、武芸と戦略戦術では敗北しました。」
「しかし女としては、まだ屈服していません。」
「私からも、一つ聞いていいですか?」
「なぜその様なことにこだわるのですか?」
「長く生きてきた私にとって、正義は力によって行使されると信じているからだ。」
「理想だけの正義など、何の役にも立たないのは、巫女様が一番ご存じのはず。」
「私にとっては、下位の存在に命じられることは屈辱なのだ。」
「それがいいか悪いかは、私には分からぬ。」
「しかし従う以上は、すべてにおいて、私より上位にあることが大命題なのだ。」
プライドが高いのですかね。
しかし参謀は優秀、しかもレムリアを知り尽くしている。
それで協力してくれるなら、何でもしますよ。
鬼にでも蛇にでも、なりますよ。
「いいのですね、私はこう見えても百戦錬磨、生娘ぐらい訳はありませんよ。」
「能書きは結構。」
どうしてこうなるかは解りませんが、ちょっと舌舐めずりした私です。
付き添いの三人が、うまくやったなと云う顔していますが、それはだれに向けたものでしょうか?
フリードリッヒさんが、
「生き恥をかいてください、私も都市同盟の幹部も、後世の誹りは甘んじて受ける覚悟を固めました。」
「ヒルダ参謀も、率先して生き恥をさらしてください。」
「いまから生き恥をかこうと思っている。」
ちょっと待ってください。
これでは私が、究極の人でなしではありませんか。
「私は別に、ヒルダさんが協力してくれるなら、云うところの生き恥など強要などしませんよ。」
ちょっとむくれた私を、フリードリッヒさんは苦笑いをします。
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