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第五十五章 黒い森の都シュヴァルツヴァルト

04 ヴァカリネ女王

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 レムリア都市同盟は賑わいだしました。
 ある時、私は小雪さんとダフネさんと、いつものお茶をしていました。

「マスター、レムリアも当座の危機を、回避できたようですね。」
「褒めてくださいね、私、頑張ったのですから。」

「今回は巫女様の周りに、女っ気がないのが不気味ですが。」
 と、ダフネさんが意地の悪いことをいいます。

「そのことは、サリーさんとアナスタシアさんが気をもんでいました。」
「私もマスターのハレムが、必ずこのレムリアにもできると踏んでいます。」
「だからここにいて、見張っているのです。」
 と小雪さんがいいます。

「二人に云われたのですか?」
 とダフネさんが聞きます。
「暗黙のお頼みでした。」
 と小雪さんが返します。

 おーい、私がここにいるのですよ。
 なんで私を無視しているのですか?

「でもマスターに作るなといっても、周りが必ず作ってきます。」
「マスターの意見など、関係ない事柄ですから。」
と、はっきり小雪さんに云われました。
 これでも私は、皆さまのあるじのはずなのに……

 フリードリッヒ臨時行政代表と、カール国軍司令官が、面会を申し出てきましたので、お茶に招待しました。
 カールさんが、「大賢者殿、このたびは」と云ったところで、ダフネさんが言葉をさえぎりました。

「巫女様もいわれたように、今日は昨日を語るものではありません、明日を語るものです。」
「昨日は心の中で、思い出せばいいものです。」
 ダフネさん、お見事、大賢者の貫禄です。

「今日は何用ですか?」と、私が聞きますと、
「レムリア都市同盟も、戦争前の状態まで治安、経済が戻ってきました。」
「この上はかねてのお約束通り、レムリアのあるじ、ヴァカリネ女王陛下として、即位していただきたく、お願いに参りました。」

 たしかにそろそろいいでしょうね。
 シュヴァルツヴァルト開城の時の約束です。
「段取りはお任せしていいですか?」
 と言いますと、
「必ず恥ずかしくない、立派な即位式にして見せます、レムリア復興の象徴です。」

「ところでヴァカリネ女王陛下、我々からのささやかな贈り物がございます。」
 嫌な予感がします、雲行きが怪しくなってきました。

「贈り物はお気持ちだけいただきましょう、今は即位式の段取りが大事です。」
 ダフネさんが、「もう購入したのですか?」
 そんなことを聞かないの!
 まってました、になるでしょう!

「実は国民から、巫女様の即位にあたり、大陸の国々に負けないように、レムリアの心意気をお見せせよと、意見具申が絶えないのです。」
 だから……どうしたの。

「このシュヴァルツヴァルトには、王宮がありません。」
「で国民の献金が集まり、実は内緒で王宮を作りました。」

 すこしこけましたが、
「そういうことなら喜んでいただきます、皆さんの御好意です、心より感謝します。」
「王宮として使わせてもらいます。」
 とそう言ったのが敗因でしたね。

「ありがとうございます、王宮には巫女様のお好きな美女を、女官として購入して詰めさせています。」
「レムリア中より、自薦他薦で選び抜かれた女たちです。」

「……」

 ダフネさんが、
「巫女様、早とちりでしたね、巫女様の負けです。」
 ですね、どの道こうなるのでしょうね。
 私のため息の意味は殿方二人には分からないでしょう。

 三日後、シュヴァルツヴァルトで華やかに即位の式典が行われました。

 レムリア都市同盟ヴァカリネ女王は、ここに誕生しました。
 皆さんが作ってくれた王宮に住みます。
 綺麗な女官さんたちが、私の世話をしてくれることになりました。
 当然、異空間倉庫をキリーの亡霊の館と繋ぎました。
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