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第五十四章 北の戦い
07 開城
しおりを挟む私たちはシュヴァルツヴァルトを目指します。
あの戦いで、捕虜にした敵の中には、第四軍団長がいました。
残存していた敵の中の、最高指揮官です。
これで敵の組織的な軍事行動は難しいでしょう。
シュヴァルツヴァルト郊外に達して、私は降伏勧告を届けます。
無条件降伏をのめば、住民の命、財産は保証すると。
町から人がやってきました。
「黒の巫女様ですか?」
「私がヴィーナスです。」
「私はシュヴァルツヴァルト市長を務めています、無条件降伏を受諾します。」
「しかし出来ましたら、軍事占領はご遠慮いただければと、お願いしたいのですが。」
「それでは降伏した証を、どのように示しますか?」
「それは……」
「私たちは貴国と長い戦いを続けました、そしてここまでこぎつけました。」
「憎しみもないとはいえませんが、しかし町を略奪するほどのことはしませんよ。」
「貴方達のプライドだけなら、聞く耳はありません、ほかに理由はありますか?」
返事がありませんね。
「いいにくいのならいって差し上げましょうか、町で人々が反乱を起こしているのではないですか?」
「……」
「市長、貴方はどうすれば、この状態が収まると考えますか?」
「市民は敗戦は理解していますが、これを良しとしないのです。」
「このまま町とともに滅びると、叫ぶ者が大勢いるのです。」
「では滅びますか、私にとってはたやすいことですよ。」
「大陸の町では、同じ境遇に陥った時、貴国の軍は同様のことをしましたよ。」
「もっとも海兵隊は包囲したまま、町が破綻するのを待っていましたが、私も海兵隊に習いましょうか?」
市長はその結果が、どうなるか想像がついたようです。
「地獄の口が開きます。」
「無知とは恐ろしい物です、何の覚悟もなく声高に叫ぶ者が、一番に逃げる者です、この意味が分かりますね。」
私はピエールさんに、町を包囲するように命令しました。
私だって怒っているのですよ、ロキさんの大けがで、憤懣の持っていき場がないのです。
この怒りをどこへ持っていけばいいのですか。
「三日で結果がわかるでしょう、市長、ここに貴方を拘留します。」
三日たって、私は市長を呼びました。
「今一度戻ってみますか?」
「お願いします、死ぬなら市民と共に……」
「多分、今一度交渉にやってこられるでしょう。」
ピエールさんが、
「ヴィーナスさま、すこしご立腹が激しいような……」
「すいません、ロキさんのことが……レイラさんになんといおうかと思うと……」
再び市長がやってきました。
「どうなりましたか?」
「市民が一部の者を取り押さえました、どうぞ進駐して下ください。」
「いえ、市民が解放した町でしょう、軍はこのまま郊外にとどまります。」
「この地域が落ち着いたら、すぐに引き上げるでしょう。」
「さて、市長、案内しなさい。」
「案内、だれをです?」
「私をですよ、他にだれが居ますか?」
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