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第五十四章 北の戦い
02 女王旗を掲げよ
しおりを挟む十日たち作戦開始の日の朝です。
「では行ってきます。」
と、ギルベルトさんがいいますので、
「どこへ連れてってくれるのですか?」
と、聞きます。
「連れてっての意味が分かりませんが?」
「だから貴女の旗艦に私を乗せて、どこへいきますか、と聞いているのです。、ムリアス島、はたまたダーナ内海?」
「イシュタル様、いまから戦場へ行くのですよ!」
「デートに行くのではないのですよ!」
「あら、本音がでましたね、私とデートして、あんなことやこんなことを、画策しているのでは?」
「怒りますよ!」
ギルベルトさん、すこし怒っています。
短気ですね、もう一息ですか。
「怒ったところが色っぽいですよ、夜はどこへしけこみます?」
「好きにすればいいでしょ!」
「では好きにします、総司令官の許可が出ましたから。」
私はすたこらと、新・カティサーク号に乗船しました。
船上では大騒動になっています。
「艦長さん、ギルベルト提督からは許可をとりましたよ、隅っこの方でもいいので、乗せてくださいな。」
「光栄ですが今から出撃します、よろしいのですか?」
「そのために、無理やり横やりをいれたのです。」
ギルベルトさんがプリプリしながらやってきました。
「イシュタル様、図りましたね!」
「だって素直にいえば、乗せてくれましたか?」
「そんなわけないでしょう、あとでサリー様に殺されそうです。」
艦長が、「提督、いかがしますか?」
「しかたない、女王旗を掲げよ。」
「いまより、イシュタル様が我らと共に戦われる、といわれておられるのだ。」
「各艦につたえよ、女王陛下は我らと共にありと。」
するすると女王旗が上がります。
すごい歓声が上がりましたね。
アッタル騎士団を乗せた、大船団を護衛しながら、ジャバ王国海軍はムリアス島へ近づきます。
本当はアッタル騎士団とシャレム騎士団はお留守番の予定でしたが、グレンフォード公爵が諮問会議に乗りこんで来て、出撃させろと直談判したのです。
アッタル騎士団が参戦するとなると、シャレム騎士団が黙っているはずはなく、調整が大変でした。
ブレイスフォード伯爵がこれまた乗りこんで来て、あやうく乱闘騒ぎになりかけました。
もともと、かなり仲が悪いですからね、この二人は。
で、私がよくやる籤引をさせたのです、文句なしでね。
結果、アッタル騎士団の参戦となったのです。
グレンフォード公爵に、満面の笑みが浮かびます。
「これで我らの武名を上げる機会がえられた、ありがたし。」
勿論、グレンフォード公爵には、武勲より命を惜しむように釘をさしておきました。
実利があるならまだしも、見得や意地では死んでほしくないのです。
ムリアス島の、例の海岸線が見えてきました。
艦隊は単縦陣で、船腹を見せて船足を止めます。
「全艦打ち方始め!」
魔弾装備のバリスタが、一斉に射撃を始めます。
つぎつぎとウミサソリキングが退治されていきますが、生態系を壊しているのでしょうね。
一昼夜もたつと、本当に一匹もいなくなったようです。
恒常的にここを使用する場合は、石で埋めることになりそうです。
「イシュタル様、アッタル騎士団が上陸を始めました。」
「グレンフォード総長に任せておけば大丈夫でしょう。」
「問題はこちらの方です、哨戒は大丈夫ですか。」
「万全ですが、出てきますかね。」
待ってたはずですから、出撃してくると私は考えています。
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