上 下
13 / 152
第五十三章 黒の巫女は戦い続ける

03 最後の分身

しおりを挟む

「さて、いままで待っていてくれたことに感謝します、主席さん。」
「でも手加減はなしです、命はいただきます。」
 源兵衛さんが即座に反応しました、魔法が効かなくなっています。

 目の前には主席の姿があります。
 霞むような、今までの姿ではありません、現実の肉体のようです。
 源兵衛さんが、全力で封印しているようですね。
 いつものへらず口が聞こえません。

 私はこの時のためにもっていた、アテネさんの小太刀と同じものを抜きました。
 主席はすごく大きな、そりのある青龍刀のような物を手にしています。

 打ち合えば小太刀が折れますね。
 やはり相打ちを覚悟しなければ、ならないのでしょうね。
 まぁいいでしょう、散々女性を泣かせたのですし、その愛した人たちのためなら、本望というものです。

 主席が斬りかかってきました、すごい殺気です。
 いままでと違い、必殺の気持ちが見えます。
 私はかわしてばかりで、このままでは負けますね。

 私は次の一撃に、賭けることにしました。
 初めて青龍刀を小太刀で受けます。
 ガキっと音がして、一瞬青龍刀が動きを止め、つられて主席も動きが止まります。

 次の瞬間、主席が渾身の力を込めたのか、小太刀が砕けました。
 でも主席が力を込めた一瞬に、私は手刀を首筋に突き刺しました。
 手の指が折れたと思いますが、瞬時に脳内麻薬を分泌し、小太刀を手放し、みぞうちに、これまた手刀を突き入れました、こちらは折れなかったようです。

 主席は虫の息です、勝ったと思いました。
「主席、貴方は尊敬できる敵です、出来れば戦いたくはなかったのですが。」
「これは私の分身である。」

 !

「いま私は敗北した、巫女様のお覚悟を確認した。」
「いいか悪いかは、最早私には分からぬが、このエラムは確かに巫女様の物、所有物であるのは確かである。」

「ご自由にされるが良いかと思う、申し訳ないが、この身体も私の分身である。」
「巫女様には、私のとどめを刺せないのは、残念かと思われるだろうが、この分身が私の最後の分身である。」
「もうこれ以上は、エネルギーをチャージしなければできない。」

「チャージを開始したら、巫女様の配下のものに探知されるだろう。」
「その時点で破壊されるのは確実、つまり私は巫女様の脅威にはならないはずだ、しかし注意されることを警告しておく。」

「……」

「参謀は優秀である、出来れば助けてやって欲しい、巫女様のお役に立てれるだろう。」
「参謀は女である。巫女様は気づいておられるだろう。」

「彼女は約250年前、シュヴァルツヴァルトで行き倒れていた少女である。」
「当時私はイレギュラーを抱えて、なぜかその少女を助けた。」

「以来、参謀は忠誠を誓ってくれている、電子計算機である私がいうのも変だが、不憫と計算している。」
「参謀はまだ処女でもある、男も女も知らぬ。」
「ただそのままの容姿では、助命は不可と計算できるので、巫女様の魔力でその辺は考慮されたい、以上である。」

 そう云うと、主席の分身は息を引き取りました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...