上 下
114 / 125
第五十九章 夜の宮殿

イザナミさんの警告

しおりを挟む

「サイボーグ戦闘艇だったとか?」
 イザナミさんが口を開きました。

 ここは宇宙移民船ヨミ号のコントロールタワー、夜の宮殿と呼ばれる場所です。
「私がイザナギと戦った時には、なかったのですが……」

「シウテクトリさんも知らないと云っています、惑星エラムにあった男性体の最終指導者、オーディンの資料の中にもありませんでしたし……」

「多分最後の内乱時に作られた試作品……としか考えられません」
「しかし自らサイボーグになるのですか?」
「遺伝子改良した、サルの頭脳を使えばどうですか……」

 惑星アールヴヘイムンの人々はそのための実験……
 サイボーグ戦闘艇に埋めこまれた頭脳は、最後に残された記憶と使命感で、自らのようなサイボーグ戦闘員の要員を作り出すために、遺伝子改良を行った……
 男性体の思考に合致しそうです。

「しかし……オーディンが知らない以上、誰が……」
「キュベレーと呼ばれていた指導者がいたそうです、穏健派とのことですが、もし彼が内心は復讐を目論んでいたら?」

「作られた試作タイプの軍事技術の記録は、消去するはずですね……」
「私もマレーネさんもそう考えています」

「……ミコ様……」
 イザナミさんがその名を口にする以上、非公的な話なのでしょう。

「マレーネさんのことですが……」
「それ以上は口に出さなくていいですよ、シウテクトリさんも同じような警告をくれましたし……その時は……オルメカとヨミが助けてくれるでしょう……」

「要らぬことを言いました……信じると用心は並立すると知りました……」
「本人自身がその可能性を心配しています」

 何故私がヨミ号にいるかというと、夏休み終了後の最初の土曜日、この日、ヨミ号は全面改修を終え宇宙母艦フリングホルニ号を離れる日なのです。
 ほぼ一週間でこれを終えたマレーネさんの力は、驚くべきものです。

 マレーネさんがやって来て、
「イザナミ……懸念の事は私自身がよく知っています、もしその時が来れば、マスターが私を壊すでしょう、それだけのお力はお持ちですよ」

「お聞きになっていたのですか?」
「論理計算の結果ですよ」

 感情など入らないのが人工知能の会話、ただ私と話するときは、何故かイレギュラーが出るようですが……
「とにかくその時は私が対処します」
 この会話は終わりです。

「天の浮舟号と宇宙防衛艦隊も準備が整いました、いつでも出発できるでしょう」
「ではいきますか?イザナミ、出港を命じます」

「ヨミ号乗員、及びそれに従う艦艇乗員につぐ」
「只今より我等はルシファー様配下の軍団ヨミとして、プレオネ星系外縁部のプレオネステーションに向けて出港する」

「我等の目的は、ルシファー様より預かったプレオネ三姉妹衛星、つまり三つの衛星、パレスティーナ、メリオール、メリュジーヌの、ホモサピエンスを指導することである」
「各員ルシファー様の為に努力をするように」

 そしてヨミ号は、転移を開始しました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...