上 下
61 / 69
第九章 困った方です

『ボーイ』はイザナギに恋をした?

しおりを挟む
 ミコさん、小さく薄い霧のようなものを両手で包み込み、
「ヒルコ、私に従え、お前は従う事しかできない、そして遥かな昔のように、アスラのしもべとなれ!」

「私には選択が許されないのですね」
 幽かな呟きが聞こえます。

「許されない、従え、私が汝の主だ!」
「……主よ……ご命令を……」
 
「ヒルコ、汝は私の何なのか?」
「……奴隷でございます……」

「身体を返してあげましょう、実体化しなさい」
 実体化してくれましたが、裸ですね……お茶を飲んでいた時には、なにか服など纏っていたような……

 カウナケス――古代オリエントのひだのついたロングスカートのようなもの――ではなかったですね、あれは私の趣味ではありませんが、右肩をだしたサリーのような衣装でしたね。
 胸があまりありませんね……ウエストもそれほど……幼児体型ですね、髪は刈り上げているし……

 ボーイッシュな顔立ち……よく見れば幼い雰囲気もありますが美形ですよ。
 髪を伸ばして、女らしくすれば、間違いなく美女でしょう。

 まぁイザナミさんの娘ですからね、美しいにきまっていますが、胸がね、その上ウエストもヒップもね。
 でもアンダーヘアーは薄く短く、下向きで逆三角形。

 ……これって温和で従順、受動的で、下向きですから異性運が悪い、その上、短いですから同性愛の傾向もある……確かに男に自由にされたとはいえますね。

 手を胸のあたりに組んで、挨拶をしてくれました。
「綺麗ですね」といいますと、
「お上手ですね、私は未成熟だったのです」
「だからあるじ様たちは、私を捨てろとイザナミ様に命じられたのです」
「未成熟?」

「この身体です、本来私は『ボーイ』の試作品として製造されました」
「『ボーイ』とは、女性体に仕える力仕事を担当するアンドロイドの事です」

「しかし『ボーイ』は不評でした、力仕事はロボットがすればよい」
「『ボーイ』ですから、私には女性体の特徴はありません、女性体の世界では異質、目障りな存在となったのです」

「廃棄と決定しましたが、イザナミ様がイザナギ様に譲渡するという事で、主を説得して下さったのです」

「私から見ると別に未成熟とは思いませんが」

「いえ、未成熟ということで、私は棄てられたのです、しかしイザナミ様には感謝しています」
「イザナギ様に譲渡して下さったのですから……最愛の主、私の全てでした」

 なるほどね……ある意味、恋愛の対象だったのでしょうね……少女は頼もしいおじさまにあこがれる……
 でもね、イザナギはイザナミを愛していた……
 貴女の入る隙はなかったでしょうね……

 あわれな……抱いてしまいましょうか……愛したいより、愛された方がベストでしょうね……
 このヒルコさんのイレギュラーは進んでいるようで、自我が発生しているようです。

 自らをどうしていいかわからず、孤独に怯えている子供のような存在、誰かに愛され、孤独ではないと信じさせる必要があります。

 でなければ早い段階で、自傷しそうですね。
 ヒルコさんは、もはや生体なのでしょう。
 思考回路が論理性を失っています……

 どうせ今回の事で、私が女を拾ってくるのは、サリーさんもある程度はあきらめているでしょうし、この際、ひと時サンドバッグになればおさまるでしょうね……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】暁の荒野

Lesewolf
ファンタジー
少女は、実姉のように慕うレイスに戦闘を習い、普通ではない集団で普通ではない生活を送っていた。 いつしか周囲は朱から白銀染まった。 西暦1950年、大戦後の混乱が続く世界。 スイスの旧都市シュタイン・アム・ラインで、フローリストの見習いとして忙しい日々を送っている赤毛の女性マリア。 謎が多くも頼りになる女性、ティニアに感謝しつつ、懸命に生きようとする人々と関わっていく。その様を穏やかだと感じれば感じるほど、かつての少女マリアは普通ではない自問自答を始めてしまうのだ。 Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しております。執筆はNola(エディタツール)です。 Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。 キャラクターイラスト:はちれお様 ===== 別で投稿している「暁の草原」と連動しています。 どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。 面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ! ※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。 ===== この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

白き鎧 黒き鎧

つづれ しういち
ファンタジー
高校生の内藤祐哉は、身罷(みまか)った異世界の王の身代わりとして突然かの世界に掠め取られる。 友人・佐竹は彼を追うが、ごくわずかの時間差から、向こうではすでに七年もの歳月が流れていた。 言葉も分からぬ異世界で内藤を探す佐竹。 が、やがて出会った国王が成長した内藤にそっくりで――。しかし、彼に内藤としての記憶はなかった。 敵対する二つの国の二つの鎧の秘密に迫り、佐竹は敵国ノエリオール、黒き鎧の王と戦う決意をするのだったが――。 ※つづれ しういち作のオリジナルファンタジー小説です。「小説家になろう」および「カクヨム」にも公開中。他サイトへの無断転載は許可しておりません。

雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」 そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。 明日は来る 誰もが、そう思っていた。 ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。 風は時の流れに身を任せていた。 時は風の音の中に流れていた。 空は青く、どこまでも広かった。 それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで 世界が滅ぶのは、運命だった。 それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。 未来。 ——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。 けれども、その「時間」は来なかった。 秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。 明日へと流れる「空」を、越えて。 あの日から、決して止むことがない雨が降った。 隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。 その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。 明けることのない夜を、もたらしたのだ。 もう、空を飛ぶ鳥はいない。 翼を広げられる場所はない。 「未来」は、手の届かないところまで消え去った。 ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。 …けれども「今日」は、まだ残されていた。 それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。 1995年、——1月。 世界の運命が揺らいだ、あの場所で。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ
ファンタジー
大陸の端に存在する小国、ボーンネル。 バラバラとなったこの国で少女ジンは多くの仲間とともに建物を建て、新たな仲間を集め、国を立て直す。 そして同時にジンを中心にして世界の歯車は動き出そうとしていた。 これはいずれ一国の王となる少女の物語。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...