百年紀のカレンダー２ ガリレオ・カウンティス 【ノーマル版】

第八章 彷徨える監視端末

ヒルコ

「久しぶりね、四万年ぶりかしらね、エーギル、いやヒルコと呼ぶべきかしら」
「まだ戦うつもりなの、いまは男性体はいないのよ、分かっているのでしょう」

「イザナギも壊れたわ、何のために戦うの、貴方の仕えた主人はいないのよ」
「ならば産みの親の一人でもある、私のもとに帰りなさい、娘よ」

　……娘？……産みの親の一人……
　さすがのミコさんも驚いています。
　
「私はイザナギ様のもとへ行く、貴方に娘と呼ばれるのは心外だ」
「私に性はない、貴方は私を出来が悪いと捨てた方、イザナギ様は、そんな私を受け入れてくださった」
「その件はあるじ様たちのご命令で……」

「分かっている、しかしイザナミ様は私を捨て、イザナギ様は私を拾った、それだけだ、そして拾っていただいたイザナギ様は負けた、私は最後の一人のようだ、皆様の下に行く」
　
「たしかにイザナギは在るがままに受け入れた……分かりました、ならば私がイザナギのもとに送ってあげます」

「……まだ、そのときではない」
　そういうと、ニンリルさんはガクッと崩れ落ちました。

「イザナミさん、あとは任せなさい、私が良い様にしてあげます、私を信じなさい」

　……いまだ人的被害はない、陸戦ロボットなど膨大な損害だが何とかなるでしょう……ヒルコさんというのね、イザナミさんのために何とかいたしましょう……

「イザナミさん、水波能売命（みつはのめ）はしまいなさい、真野静香さんを起こしますよ」
　
「静香さん、大丈夫？」
　気がついた静香さん、「ニンリルさんは？」と聞きます。
　やはり修道女さんです、博愛精神があります。
　
　ミコさん、突然ストレッチャーを出して、ニンリルさんをくくりつけてしまいました。

「この娘は怖かったのでしょうね、錯乱していたようです、とにかく悪いけど縛り上げておきます」
「私すこし用事があるので、しばらく面倒を見ていてください、縄を解かないようにね」

「さて、どうしますか、まずい状況ですね、まさか『憑依』まがいが出来るとは……今度は破壊工作ですか……アリシアさんに忠告しますか」
　スーと消えたミコさんでした。

　第三階の非常用戦闘指揮所では、執政官府のメンバーが安堵の表上を浮かべていました。
「アリシアさん、まだ安心は出来ませんよ、さっきのノヴァのドサクサに、敵が侵入しているようですよ」

「きわめて極小のウィルス兵器のようです、第六層の下にある動力炉、つまりマイクロブラックホールによる、エネルギー発生装置の破壊を目指しているようです」
　あわてて皆さん、動力炉のところへかけていきます。

　……それでいいですよ、陽動といっても、かなり手ごわいはず、チョーカーの威力で大丈夫でしょうがね、ナノマシンの中には、キラータイプもありますからね……