百年紀のカレンダー２ ガリレオ・カウンティス 【ノーマル版】

第七章 地獄のヴィーナス

有機体生産工場

「レリン軍事参議官、こちらに来ていただけませんか！」
　突入した兵士が叫んでいます。
「何事か！」
　レリンが駆けつけると、呼んだ兵士たちが、無言で指差しています。

　兵士たちがたたずんでいるのは、バルコニーのようになっている場所で、その指し示す指の先は、一段切り下がった場所、約五メートルほど下に広がる巨大な空間の部屋です。
　そこには唖然とするものがありました。

　有機体生産ライン……レリンさんがうめくように呟きました。

　エーギルは感知していた。
　自らの遠隔構成粒子をここへ漂わせていたからだ。
　……そこだ……調査にはいれ……遠隔戦士たちを知りたいだろう？
　軍事機密を囮にするのだ……興味があるだろう……さすれば隙ができる……

　すぐにミコさんにも報告がありました。
　ミコさんは徹底的に調査するように命じます。

　……エーギル……のってあげるわ、その昔の人種改良の現場を垣間見れるのだから……
　ここまでする以上、私の首を欲しいのでしょう？お望みどおり、隙を見せてあげるわ……

　ユニバースとヨミによる調査が始まります。
　リアルタイムにガリレオ衛星ステーションの執政官府にも映像が送られています。

　生産ラインは始原生殖細胞を培養して育てていくものですが、その途中途中に手を加えています、十日ほどで『生体』を作り出しています。

　かなりのパターンが存在するらしく、個体差がありますが、生殖機能が削除されています。
　生産ライン最初の始原生殖細胞には、生殖器の兆候がありますので、ライン途中で改良されているようです。
　どうもオリジナルは女性のようですが、乳房もありません。
　
「性ホルモンの分泌がない……」
　
　生産ラインで育てられた『生体』は、次のおぞましいラインに入っていきます。
　頭脳をチェックして、どうやら優秀なものは首を切断して、各種のコードとチューブを差込、遠隔操縦の司令塔やサイボーグ戦闘艇の頭脳となるようです。

　切断されない『生体』は、遠隔操縦される兵士や奴隷となることが判明しました。
　どちらも徹底的に洗脳されています。
　反乱など起こりようがありません。

　首の切断工程の映像は、かなりのもののようで、ミリタリー種族は平然としていましたが、執政官府の女性たちはかなり嘔吐したようです。

　九十気圧の底、四百度以上の灼熱地獄とも呼べる第二惑星……
　そんな地表の底に、本当の地獄があったようです。