百年紀のカレンダー２ ガリレオ・カウンティス 【ノーマル版】

第七章 地獄のヴィーナス

汎用戦闘宇宙船、速鳥（はやとり）

「いたしかたない、ルシファー様はお見通しだったようだ」
「ゼノビア、ここのドックにあるという、汎用戦闘宇宙船を送ろう、なんでもワープの能力が強化されているらしい」
「恩に着る……」

　イザナミさんは黄泉醜女(よもつしこめ)の隊長、大雷（おおいかづち）を呼び出します。
「大雷（おおいかづち）さん、いま金星の地表で、ユニバースの部隊が戦闘中なのですが、苦戦しているようです」
「うまい具合に、ドッグにサンプルとして、汎用戦闘宇宙船が一隻完成しています」

「揚陸機能もあるようで、惑星大気の中を戦闘行動をとることもできる船です」
「悪いですけど、軍団をこの船に乗せて、ユニバースに助勢してきてください」
「承知しました！」
　大雷（おおいかづち）さん、ややこしいことなど言わず、あっさりと出撃しました。

　船の名前は速鳥（はやとり）、葉巻型をしており、長さ２０００メートル、直径は５００メートル。
　完全武装のヒューマノイドの兵士を１００名、陸戦ロボットを５００体、戦闘車両を五台収容できます、これはヨミの一軍団の定数です。
　ワープ装置はかなり特別なもので、ワープ先を映像として映し出せ、ワープ先の状態を知ることが出来ます。
　映像ワープ装置などと、マニュアルに書かれています。

　そのほか、任意の空間そのものを、入れ替えることもできるようです。
　大雷（おおいかづち）さん、黄泉醜女(よもつしこめ)の最精鋭軍団をチョイスしています。
　
　レリンのレシーバーに、直接ゼノビアからの通信が入ってきました。
「いま援軍を送った、ヨミの最精鋭軍団黄泉醜女(よもつしこめ)だ、彼女らと協力して軍事要塞をおとせ！」

「危険です、陸戦ロボットが瞬時に壊滅したのです！それより軌道上の、小型ステーションの降下を進言いたします」
「小型ステーションの降下？」
「敵軍事要塞の上にのしかかるのです」
「それは最後の作戦とする、いまは黄泉醜女(よもつしこめ)の指示に従え！」

　速鳥（はやとり）は、このやり取りの直後に直接転移してきた、九十気圧の底にである。

　宛　ユニバースのレリン指揮官
　発　ヨミ黄泉醜女(よもつしこめ)隊長、大雷（おおいかづち）

　　速鳥（はやとり）は今より敵要塞の防衛砲台を撃破、侵入通路を確保占領せんとす、レリン指揮官はユニバース部隊を率い、我に続かれんことを希望する。

　その時、再び上空で核爆発が……
　速鳥（はやとり）は、衝撃波に船首を向けると、船尾の大気と入れ替えたのです。
　ワープを瞬時に、自由設定できる機能を流用したようです。
　御蔭でレリン達が展開する範囲には、直接の衝撃波はなく、踏ん張れる程度の物となりました。
　
　速鳥（はやとり）の反陽子ビームが、防衛砲台に次々と直撃、敵軍事要塞が沈黙します。
　撃破した防衛砲台の一つに、のしかかるように取りついた速鳥（はやとり）は、防御バリアを展開、防衛砲台に大穴をあけ、侵入通路を確保したのです。