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第二章 惑星間帆走宇宙船
見事なお尻の叩き方
しおりを挟む「ガリレオ衛星開発は順調ですか?」
執政官府での会議の冒頭で、アリシアさんは切り出しました。
四大財閥の開発担当者が並んでいます。
会議の目的は、開発を始める前の下準備の打ち合わせです。
その席上で、『開発は順調か』との問いに、失笑が湧きあがります。
「執政官、まだ開発の下準備の会議ですぞ、順調も何もないではありませんか」
「おかしな事をおっしゃいますね、このステーションが稼働した以上、衛星開発は始まっています」
「のんびりと下準備の打ち合わせ?貴方たちはマルスで何をしていたのですか?」
「私に言わせれば、下準備の会議など当然終わっているものと思っていました」
「先を見据えて行動しなくては、競争に勝てないでしょう?」
「競争とおっしゃいますが、何の競争なのですか?」
「開発競争ですよ、というより投資を早めに回収しなくてはならないでしょう」
「許可を得るため、ナーキッドに莫大なお金を治めているはず、幾ら四大財閥といえど、笑えない額でしょうに」
……
「とにかく明日からすぐにとりかかってください、私も関係者でありますので、理由がなくては、便宜など図ってあげられないのですよ」
「収められた資金で、各々の担当の衛星にジャンプ・ステーションを作ってあります」
「後は皆さんが自分でしなくてはならない、言っときますが、オーナーは吝嗇ですからね」
……おやまあ、アリシアさん、いってくれますね。
私、えらくケチだったのですか、自分では知らなかったですね……
……それにしても見事なお尻の叩き方、理由があれば便宜を図ってあげると、いっているのですよね。
まぁ四大財閥の選り抜きですからね、言葉の意味は分かるでしょう。
でも利己特性が弱まると、こんなところで欠点が出るのですね、競争意識が薄くなっています。
しかし、それでいいでしょう、別に進歩は必須ではないし、ゆっくりと生活すればいいのですよ。
頼り頼られ、人は一人では生きられない、だから隣人は尊重するようになる。
アリシアさん、お尻を叩くのもほどほどにね……
勤勉は必要です、そして身の程を知った生活、さらに少しは周りに楽しみを共有する……
二宮尊徳さんですね、でもね、一つ言わせていただければ、勤勉も身の丈に合った勤勉です。
私は汗は必要と思いますが、楽しみもあり、休息もあり、少しばかりは官能もね。
何事もバランスなのです、これが基本、この基本を不安なく、安定して提供するのが上の者の使命でしょう。
これを成し遂げる為には、過度の勤勉が要求され、それゆえ崩れたバランスは、名誉や大きな楽しみなどでバランスをとる……
究極の立場に立てば、渾身の勤勉を強いられ、その報酬、つまり代価は、人々の喜びを喜びとするようです。
私も人々の笑顔に癒され、その為の疲労困憊を、幸せに感じてしまうようです。
案外マゾなのかもしれませんね。
近頃、ケチとかスケベとか、はたまたエロ小説の主人公にまでされますが、それこそ望むこと、これでいいと思ってしまうのです。
なんといっても、私が悪く言われるのは平和な証拠ですからね。
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