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第一章 ガリレオ衛星ステーションにて
困った方が困ったことをしそうです
しおりを挟むアリシア・デビットソンは、執政官府で職員に訓示を垂れていました。
「皆さん、本日よりガリレオ衛星執政官府が発足いたしました、皆さんは各自の出身組織が違います、しかしそれは忘れていただきます」
「私も御存じのようにデヴィッドソン財閥の出身ですが、いまではオーナーに仕えるただの女です、皆さんもオーナーに仕える者として扱います」
「そうはいってもしがらみがあるでしょうが、オーナーに仕えると言う事を第一に、職務に励んでいただきたい」
「四大財閥を公平に扱う事による、多少の能率の低下は許容されるべきです」
「これからは一般市民も増えてくるでしょう」
「私たちは市民に対しては、安心を提供する義務があり、それは何にもまして優先されます、ただ愚かな意見に従う事はありません」
「このように言えば、皆さんの中には、私の言葉は矛盾していると、考える方もおられると思います」
「行政とは矛盾の塊です、その矛盾の中で常に何が正しいか、何をすべきか、何を優先すべきか、それぞれの価値観や倫理観が問われることになります」
「私は皆さんを採用した時、そのような考え方が出来る方々を選んだつもりです、皆さんの働きを期待します」
「私に至らぬことが有れば、遠慮なくいってください、もしいいにくいのなら、オーナーに直接進言されてもかまいません」
「私が全てを捧げた方です、オーナーはそのことで判断を誤る方ではありません」
ミコさん、変な魔力を総動員して、聞き耳を立てていましたので、アリシアさんの言葉は筒抜けで、いたく感心していましたね。
その後、執政官府でパーティーが開かれます。
アリシアさんとしては、すぐにでも仕事を始めたかったのですが、ミコさんが、
「いいじゃない、お祝いも必要よ、ソル星系外惑星鉄道が稼働したら忙しくなるから、いまならステーション勤務の方々だけ」
とかいった結果です。
内心舌打ちしたくなったアリシアさんでした。
パーティーなんて開くと、選りすぐりのナイトガールが秋波を送ってくるのは確実、この頃になると、オーナーにいいよるのは、当然の風潮になっているのです。
案の定、ミコさん、ナイトガールのお尻なんて、触ろうとしていますよ……
「アデラインさん、困った方が困ったことをしそうです、身柄をこちらに確保していてくださいな!」
「まったく……素早い……」
慌ててアデラインさんが、走って行こうとすると、アニーさんがさりげなく、側に寄って行くのが見えました。
「あら、アニーさんも来たの、アデラインさんと一緒?」
「ええ、ミコ様」
とアニーさん、不埒な事をしているミコさんの手をとります。
「御免なさいね、ミコ様、お借りしますね」
と、ナイトガールさんに、断りなんか言います。
ムッとしたナイトガールさんですが、なんせチョーカーを付けている女に云われたものですから、諦めた顔をしました。
「もうアニーさんったら、ちょっとまってよ、ナイトガールさんに話があるのでね、貴女、たしか会ったことがありますね」
「はい、麹町のイエス会の教会で、弟と一緒に命を救って頂きました」
「やはりあの時の……なぜナイトガールに?イエス会総長のフランシスコ・ロドリゲスさんは、貴女の面倒を見ていると思っていましたが」
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