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第九章 陽は昇る
大寒波を乗り越えた先には
しおりを挟む尼僧院の食堂に、皆さんが集まっています。
「皆さん、よくカリさんについて来てくれましたね、女神様になりかわり、心から感謝いたします」
「これから一年ほど世界は荒れるでしょう」
「このヒマラヤには、援助の手などは来なくなります」
「診療所の皆様は、当分故郷に帰れないでしょう」
「女神様の御心を秋口に受け入れた方へは、困ったときには、何とか救いの手を差し伸べることができます」
「その証拠に、尼僧さんたちは寒くはないでしょう、いま電力を確保しましたので、快適に過ごせるでしょう」
「ところで診療所の方に言っときますが、此処は尼僧院なので、診療所とは完全に分離します」
「診療所の女性の方は、尼僧院に入ることを許可します」
「診療に必要な物は、市販の売薬程度のもので良ければ、カリさんにいえば何とか出来るでしょう」
その夜、クリームヒルトはカリさんと話をしました。
「カリさん、よくやってくれました、と美子姉様が云ってられますよ」
「いいえ、でも……これほどの吹雪、世界はこの後……」
「まず大丈夫でしょう、計画は上手くいっています、来年には世界は落ち着くでしょう、ただ……」
「ただ?」
「世界は活力を失うでしょう、それを防ぐには……」
「支配される者の喜びですか?」
「カリさん……」
「私はわかります、カマラリとして過ごして来た私です、大事に扱ってもらえれば、支配されるのも嫌ではないと思えるようになるのです」
「もともと女は、支配を受け入れるのには抵抗がありません、問題は大事にされているかということです、そして美子様は私たちを大事になされる……」
「……」
「娼婦であった私ですが、この間から私は感じているのです、美子さまは私たちの主、そして主に守られていると思うと、心が安らぐのです」
「そして美子さまに見放されると、思うと狂うほどの恐怖を感じるのです」
「私たちは、美子さまにお仕えすることが幸せなのです」
クリームヒルトは美子姉様に、カリさんのこの言葉を伝えました。
そして、クリームヒルトは思っています。
多分、蓬莱人はほとんどこの考えになっているのでしょうね。
そしてこの価値観を持てない方は、この大寒波を乗り越えられない……
嫌でも蓬莱は美子姉様の星になる……
利己特性はどこかへ消し飛んでいる……
美子姉様が強く介入されたのでしょう……
今の美子姉様は、テラの時の美子姉様とはその力が桁外れに違っている……
最早、神の領域ではないのでしょうか……
美子姉様は『黒の巫女』とも呼ばれています。
またヴィーナスとも……
夜空に浮かぶ明けの明星……
そう、美子姉様は蓬莱に明日を指し示したのです。
蓬莱の試練の始まりの終わり……
イシュタルの名をお持ちの美子姉様の世界……
娼婦の守護女神、イシュタルの守りし蓬莱世界……
来年には陽が登るでしょう。
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