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第八章 予言プログラム

カリとチュヌ

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「私は女神様にお仕えいたします、侍女の方のお言葉ですが、こう見えても娼婦です、何を意味するかわかります」
「お望みなら、この穢れた私ですが差し出します」

「別にそんな覚悟は要りませんよ、カリさん、貴女を『女孺(にょじゅ)』といたしましょう」
「これを指に嵌めなさい、私の加護がかかります」

 クリームヒルトが、さらにささやきます。
「もうこれで、身を売ることもないでしょう、女孺(にょじゅ)は年に金貨6枚相当、この国では十分過ぎる年収でしょうから」
「その指輪、自ら外すことは可能ですが、外したらだめですよ、二度と付けられませんから」

「とにかくここではなんですから、私の貧しき部屋におこし願えませんか?」

「良いでしょう、貴女のお部屋におじゃましいたしましょう」

 美子姉様が皆を転移させました、貧しいお部屋に……

 カリさんが、
「女神さま……お願いです、その大いなるお力で世界をお救い下さいませんか」

「たしかに人々は荒(すさ)んでいます、しかも驕り高ぶり、破滅の道を歩いているとは思います」
「私たちは愚かです、愚かな者たちは、愚かなりに平和を望んでいるのも確かです」
「一介の娼婦の私たちも、心から望んでいることです」

「大層な事は望んでいないのです、人が心安らかに、その日を過ごせればいいのです」
「なぜ人々は争うのでしょうか?先ほど人の本質とお教えいただきましたが、お力で、その本質を変えられないのでしょうか……」

「……」

「チュヌ!」
 と、カリさんが声をだします。
「なあに……」
 と、あの妹が顔をだします。
「私たちはまた、カリマラになってしまうの……」
「……カリ姉さんと一緒?」
「そうよ……この方がご主人さまになるのよ」

 チュヌと呼ばれた子が、美子姉様に向かって、こういいました。
「ご主人様、お願いです、カリ姉さんと引き離さないで下さい……」

「世界の為に、すべてを差し出すというのですか……」
「妹と一緒なら……」
「私もカリ姉さんと一緒なら……死んでもいいし……娼婦でもいいの……」
 チュヌちゃんが、いってのけました。

 あ・は・は……
 急に笑い出しました。
 美子姉様、壊れたの……

「カリ、汝の請願を聞くことにした!」
「私は行き着くところへ行くまで、介入はする気はなかったが、いいでしょう、人の尊厳などにこだわることはやめました」
「尊厳などにとらわれて、死ぬことはない……この世界の人の心を変えてあげます!その上で未来は自ら選択すればいい」

「チュヌといいましたね、この指輪を授けましょう、外してはいけませんよ」
 そう言って、『采女』の指輪を授けています。

 チュヌが衣服を脱ぎ始めましたが、
「女になってからでいいですよ」
 と、美子姉様が言いました。

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