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第六章 問題発覚

宇賀一族

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「……人工の世界……いや……神の世界……創造主の世界……ニライカナイも凄いが……」
「これで驚いていたら……惑星ヴィーンゴールヴには降り立っていませんが、ステーションは知っているでしょう?」

「あの星は、銀河の中をふらふらしていた、浮遊惑星をベースとして作り上げた星です」
「しかも恒星まで作り上げた、人工の惑星系なのですよ……もうすぐ第二番惑星をつくる計画があるそうです」

 眼下のマルスの大地を眺めながら、宇賀さんはしばらく黙っていました。

 そして、
「……そうですか……美子様のお力で救われる世界もある……でも……蓬莱の行く末はどうなるのでしょう……」

「美子姉様は本来とても忙しい方で、一年の休暇なんてとても珍しいのですよ」
「ここしばらく戦い続けられていましたから……さすがにサリー様も、休暇をお認めになったのでしょうね」

「でも……私がこんなことを言うのはなんですが、美子姉様は言葉は冷たいですが、どこか最後はお優しい……」

「宇賀さんは空狐さん、神に近い存在ですから、お分かりになるかと思いますが、美子姉様には神の冷たさ、厳しさはそれほどではないと思います」
「むしろ観音菩薩様……その証拠に、美子姉様は女神アナーヒター……観音菩薩と同じ存在といわれています、ゆえに関連性は極めて近い……」

 クリームヒルト、超人(ユーベルメンシュ)の実力を発揮しています。
「推察するに、美子姉様は最後の最後には、何とかするお気持ちを持たれているのでは?」

「ただし、蓬莱の人々の利己特性はあまりに酷い……私の故郷のテラも、それは酷いものでしたが、それでも蓬莱に比べればまだましだった……」

「なのに恐ろしいほどの人的被害の上に、やっと滅亡を免れた……このままでは確実に蓬莱は滅亡します」
「それはテラを見てきた私にはわかります、人間の利己特性とは恐ろしいものです、これを何とかしなければ、救っても救っても、瀬戸際を繰り返すのです」

「……」

「蓬莱の人々の心と身体に介入して、滅亡を回避することは、美子姉様のお力なら簡単です」
「でも、それでは種族としての尊厳が保たれない……だからしばらくは介入しない……」

「善狐さんは助けても、それは宇賀一族に対して……その証拠に、森さんを愛されないでしょう?」
「つまり代価を受け取らない……責任と義務を負わない……」

「私の見る所、蓬莱は自滅の道を歩いています、いつか最後の時が来るでしょう」
「その時、蓬莱の人々が最後の水を互いに分けることが出来るのなら、美子姉様は必ず代価を受け取るはずです……」

「そして人々の明日を、何とかしようとされるでしょう」
「全ては人の心次第……ですか……」

「こんなことをいってはなんですが、美子姉様は宇賀さんたちにも、関わりたくなかったと思いますよ……」
「あの時、皆さんの必死の嘆願にも、動こうとされなかった……でも最後は折れたでしょう?」

「思うに何処か最後は、お優しい方なのです、でも時と場合によりますが……」
「公的な立場にたてば、極めて冷酷な判断を示されます」

「美子姉様が宇賀一族を助けたということは、何処かで助ける値打ちをお認めになったと、考えていいのではありませんか?」
「先頃私は、愛人会議に出席を命じられました、それは美子姉様の指示です」

「そこで私は、蓬莱の今後について考えを述べました、その結果でしょうか、私は蓬莱の執政官を命じられました」
「美子姉様は、私にお任せなされましたが、その事が、最後には何とかしようとお考えの証拠でしょう」
「私に任せるということは、上手くいかなければ後始末を引き受ける、ということでしょう」

「では……救いは有ると……サリー様のおっしゃったとおり、宇賀一族は使命が有るのでしょうね……」
「こう見えても、私たちは永く蓬莱で暮らしてきました、故郷とも呼べるのが蓬莱です」

「クリームヒルト様、私たちは執政官に協力せよと、先頃命じられました」
「天照大神(あまてらす)様との、事務的な話し合いも終えています」
「よって蓬莱ステーションの、全面的な使用を許可されています」
「宇賀一族一万名は、蓬莱ステーションに移住、監視任務とともに、クリームヒルト様の命令に従う所存です」

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