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第六章 問題発覚

マルス世界

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 フォボスステーションから衛星連絡鉄道に乗り、マルスの首都である、グラブダブドリッブに降り立ちます。
「物凄い宮殿みたいなものが見えるけど、あれは何?」
 ミチちゃんが、クリームヒルトに聞きました。

「ルシファー宮殿、美子姉様の居館なの、美子姉様のお住いは、公的なものとしては三つあるのよ」
「その内の一つがあれ、後の二つは惑星エラムの神殿都市シビルと、ニライカナイの中にあるわ」

「最も、プライベートでの本当のお家って、リリータウンと呼ばれる町に有るといわれているの」
「愛人様たちだけが、お住まいになっている町なのだけれど……」
「クリちゃんでも知らないの?」
「ええ……」
 そういえば美子姉様の事……あまり知らないわ……正式に愛人にならなければ……教えてもらえないのかしら……

「これから、私たちは何処へ行くのですか?」
 宇賀さんの言葉に、我にかえったクリームヒルト。
「今日はマルスの最高峰、オリンポス山頂にある、スペースラグーンにあるホテルで一泊です」

 惑星マルスのオリンポス山頂には、惑星移民船、ソルフィン・カルルセフニ号が地下深く格納されています。

 テラの一連の動乱により、アイスランドのレイキャネース・ハウスを丸ごと移動させた、この惑星移民船はマルスの最高峰、マルスの標高基準面から25,000mの山頂ででんと居座って、再び眠りに入っています。

 山頂は成層圏に突き出ている場所で、船は地下格納庫に収まり、そして地上の外周は二重の透明ドームに覆われて、今では惑星マルスのリゾートとなっています。

 このオリンポス山はマルスのホットスポット、地下にはまだ、マグマの余熱が残っていたのです。
 テラのブルーラグーンが、天然温泉に変わって、再現されています。

 遥か眼下には、テラフォーミングされたマルスの大地、これを見ながら露天ぶろ、といっても頭上はドームが覆っていますけど……タルシス三山も良く見えるし……

 このマルス世界に属する寵妃および寵妃候補さんたちには、スペースラグーン近くに、オリンポスコロニーと呼ばれる場所があり、ささやかではありますが、個室が与えられています。
 また一般女官用には、簡易宿泊施設が設置されていますが、今回は一般のホテルに泊まることにしました。
 ここでも社会見学だそうです。

 衛星連絡鉄道のステーションには、マルス内の各首都をつなぐ、リニアモーター鉄道と連絡しています。
 スペースラグーンに行くには、オリンポス山の麓一帯はアイスランド地域ですので、とりあえずは首都ニューレイキャネースにいく事になります。

 そのニューレイキャネースから、観光用の登山鉄道に乗り、山頂を目指しますが、成層圏を超える為に、一度乗換して、与圧キャビンの列車で山頂のスペースラグーン駅へ着くのです。

「成層圏の温泉ですか……凄いですね……」と、稲田先生が驚いています。

 ホテルにチェックインです。
 このホテルは、マルスの鈴木商会のグループ企業で、ナーキッドからクリームヒルト一行についての通達が届いているようで、「吉川クリームヒルですが……」といった途端に、「委細承知しております」と、いわれてしまいました。

 すこしばかりいい部屋が二部屋、用意されていました。
「宇賀さん、ここには展望タワーがあるのですよ……それに乗ってみませんか?」

 展望タワーと呼ばれていますが、要はささやかな軌道エレベーター……
 25,000mの山頂から、さらに15,000mほどいったところに、軍用の輸送船ドックがあり、その一部、山頂から3,000mほどいった場所までは、一般公開されているのです……

 いながらに、テラフォーミングされた、マルスの大地が俯瞰できるのです。

 眼下には、アマゾニス海が満々と水をたたえていますし、巨大なオリンポス山の全容が見え、彼方にはタルシス三山が連なっています。

「なんとも……言葉がない……」
 と、稲田先生が呟きますし、さすがのマチちゃんたちも息をのんでいます。
 シズちゃんが、「すこし怖いわ……」と言ったのが、印象に残ったクリームヒルトでした。

「このマルスの世界は、美子姉様の命令で、愛人でもあられるマレーネ様が、七日七晩で不毛の大地を惑星改造されたのです」
「中心核を改造して重力を作り出し、オールトの雲から水を持込み大気を改造し、太陽風をエネルギーとして、光と熱に変換する微小マシンを、上空に浮遊させたようですよ……」
「動植物も遺伝子改良しながら、テラから持ち込んで、一年でとりあえず住める世界に改造したそうです」

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