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第三章 お外にでれば
聖ブリジッタの卒業生
しおりを挟む後でクリームヒルトの知る所によると、この森さんという方は、聖ブリジッタ女子学園山陽校中等部の卒業生でしたが、何でもご両親が死亡し、親戚に預けられていた所、養父に犯されたそうで……
その後、養父の情婦にさせられていたところを、どうやら最近のヤクザの出入りで、その養父が殺されたようなのです。
美子さんが、稲田先生に書類を渡しながら、
「宇賀さん、この森さんを、明後日開店の店舗の店員に雇ってあげてくれませんか?」
「美子様がその様におっしゃるなら……」
怖い顔の男の方が、森さんに、
「あんた、不始末などすれば、こちらの身が危なくなる、その様なことがあれば、俺達はあんたを始末しなければならなくなる」
「見たこと聞いたこと、全て口を閉じることだ、それにこれからはこの方があんたのご主人様、求められればどんなことでもすることだ、いまさら恥ずかしがる玉でも無いだろう」
「……」
「何処に住んでいるのですか?」
と、美子姉様が聞いています。
「住むところはありません……しいていえば……」
ここで美子姉様は言葉を遮り言いました。
「住むところは私があげましょうから、昨日までは幻と思いなさい、そして明日もあげましょう、貴女とは縁あるようです」
クリームヒルトは、この美子姉様が誇らしくて誇らしくて……
「かっこいい!」
と、言ったマチちゃんも同じ思いのようです。
怖い顔の男の方に対して、
「この娘の宿泊は用意していたの?」
と 美子姉様が聞きますと、そこまでは用意していないとのこと……
「お部屋なら、当方が用意いたしましょうか、予備を一部屋取っていますので」
と、別の男が突然、声をかけてきました。
お二人の姉様は、その方を知っているようです。
「今日はよく会うこと」
と茜姉様がいいました。
「では、私はこれで」
と怖い顔の男のほうがいいます。
「ご苦労様、この娘の事、礼を述べましょう」
「今ひとつ望みを叶えてあげましょう、いってみなさい」
「……出来ましたら……これで……」
「関わりを持ちたくない……ですか?」と笑いながら美子姉様がいわれました。
「いいですよ、ではお礼は別のものでしましょう、なにか小袋はお持ちですか?」
「これでよろしければ……」
と小さい男性用のポシェットを差し出しましたので、ギュウギュウにウィーン金貨を詰め込んでいました。
「足りませんかね……」
「いえ……十分です……」
「では本当にご苦労様でした」
怖い顔の男たちは、森さんを置いて、逃げるように消えて行きました。
稲田先生が、森さんを座らせて抱きしめます。
「さて内調さん、部屋はありがたく譲ってもらいましょう、その代わりに話ぐらい聞いてあげましょう」
「宇賀さん、皆を連れて先にお風呂にでも行っていて下さい、稲田さんは、森さんと譲ってもらった部屋で話を聞いてあげると良いでしょう、では内調さん、茜姉さん、席を替えますか」
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