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第三章 お外にでれば

鯛の舟盛り

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「あなた達、希望通り四人一緒にしてあげたのですから、静かに恥ずかしくないように、他のお客様の御迷惑にならないように、いいですか」
 美子さんに厳重に注意された、クリームヒルトたちのテンションは一気にダウン……

「枕投げなどしないようにしなさいよ、美子もいいましたが、他のお客様に、ご迷惑をかけたら承知しないわよ」
 茜さんにも念を押されて、さらにおとなしくなってしまった四人娘……

 でもお部屋に入ると、そんな話はころっと忘れて、
「綺麗!」
「みてみて、船が浮かんでいる!」
「あっ、お菓子が置いてある!」
「これどうやって着るの?」
 かしまし四人組でした。

 そこへ稲田先生と、茜姉様とヴァランちゃんが浴衣に丹前姿でやってきます。
「ご飯にいきますよ、その後、温泉にいきますよ」

「ご飯は何なのですか?」
 と、マチちゃんが聞きますと、
「瀬戸内の海鮮料理に決まっているじゃない」
 歓声をあげた四人組……
 そこへ美子姉様が、宇賀さんを従えながらやって来ました。
「食事に行きましょう」

 そのころ調理場ではてんてこ舞いです。
 この日は、突然満室になったうえに、突然に食事の時間を変えるお客様が続出したのです。

 さらには、お食事だけのお客様も多くいます。
 なかにはそれっぽいお客の一団もいれば、お役所の親睦会も、二つ三つ入っています。

「外人さんがおられますが、そちらもお刺身でいいのでしょうか?」
「いいのだろう、なにもいわれないし……」
「でも、こんなこと初めてね」

 クリームヒルトたちが食事会場へ入って行くと、満席……
 茜姉さんが、
「あらまあ、二回戦をする気かしら」
 と、言うのがクリームヒルトの耳に入りました。
 美子姉様が、小さく「フン」と言ったのも聞こえました。

 一行が指定の席に座ると、結構な海鮮料理がバンと出てきました。
 四人組はここでもテンションがアップ、お淑やかさなどは何処かへ忘れ、元気よく食べる食べる……
 美子姉様がニコニコしています。
 そこへ鯛の舟盛りが運ばれてきました。

 ?

「あちらの方の差し入れです」
 美子姉様がそちらを振り返ります。
 で、手招きをしました。
 見るからに怖そうな、男の方がやってきます。

「で?」
「お言葉どおりでした、後はこちらで自由にしても良いのでしょうか?」

「お好きにどうぞ、ただ私の嫌いな仕事をすると、知りませんよ」
「自ら売りに来た場合は?」
「無理強いでなければ、本人の自由です」

「すこしお耳に入れたいことが……」
 と、なにか書類の様なものを差し出しました。
 チラッとみた美子姉様が、
「元聖ブリジッタの生徒?連れてきたのですか?」
 と、聞いています。

 頷く男に、
「厄介事は嫌いなのに……」
 と、美子姉様が言います。

「しかしお耳に入れないと、こちらの生命が危ないので」
「それは同意しますね、やれやれ……連れてきなさい」
 別の男が、一人の女を連れてきました。

「稲田先生……ご無沙汰しております」
「森さん……」

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