百年紀のカレンダー１ 蓬莱グランドツァー 【ノーマル版】

第三章 お外にでれば

ピンクが漂っている

　瀬戸内を望む温泉ホテルで、オーシャンビューとのことです。
　あまり目立つことは避けたいとの、美子姉様の意向を尊重して、廊下一番奥の特別室一室と、それに続く和室二部屋を、何とか確保したとのこと……

「貴賓室が空いていたのですが……美子様と茜様にはそれにお泊り願いたかったのですが……」
　と、残念そうな宇賀さんではありました。
　部屋割りは茜姉様が決めました。

　クリームヒルトはお友だち三人で一室、茜姉様と稲田先生とヴァランちゃんで一室、美子姉様と宇賀さんが特別室とのことだそうです。

「美子と宇賀さんは少し話もあるでしょう」
　との、茜姉様の配慮です。

　美子姉様は、今後のことを宇賀さんと話されるのだ……
　多分私たちは知らなくてもいいことで、大事な事があるのでしょう。

　でも一度は、皆で一緒に温泉……美子姉様と温泉……う・ふ・ふ……
　横でヴァランちゃんが、
「クリームヒルト姉様がいやらしいことを考えている！」
「ヴァランティーヌ！」
「クリちゃん、ピンクが漂っている！」
「マチちゃんまで！」

「何を騒いでいるの！」
　と、稲田先生が怖い顔になっています。
「さぁ電車に乗りますよ！迷子にならないように！」
「はぁーい」

　温泉ホテルには、電車で二駅ほどいった駅で降りるとのこと、そこから電話すると、ホテルからお迎えの車がやって来る……

　女学生の一団が電車に乗り込むと、乗っている方の視線が集まります。
　クリームヒルトは当然と思っているのです。

　美子姉様と茜姉様ですもの……あんまり見ると目が潰れるわよ……
　痴漢など絶対近づけるものですか……私はお二人を守るのよ！
　クリームヒルトは、知らず拳を握り締めているのです。

　シズちゃんは、この吉川美子を眺めていました。
　……やはりものすごくお綺麗だわ……私、この方のご寵愛を……今夜は一緒にお風呂……

「シズちゃん、ピンクが漂っているのでは？」
　クリームヒルトの顔が間近にありました。
　ミチちゃんが、
「やっぱり皆考えることは同じね」

　黄色い声が電車の中で……稲田先生が鬼のような顔になったのは、いうまでもないこと。
　軽い拳骨をいただいてしまった、クリームヒルトたちでした。

　たった二駅というのにこの騒動、そしてやっと目的の駅につき、電話をしてお迎えの車が二台もやって来ました。

　もう夕暮れが近づいているようです。
　サンセットビューに迎えられながら、一行は温泉ホテルへ到着しました。