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第二章 休日は楽しいはず
ある日の出来事
しおりを挟むバスが目的地につきます。
細い参道の周りには、お土産物を売るお店が軒を連ねています。
四姉妹の、妖精と呼ばれる下の二人と、お友達の三人は大はしゃぎ、まるで夜店が並ぶ、お祭り状態ですから……
「茜姉様、甘酒がある!」
「どこどこ!」
茜さんも、少女に混じって大はしゃぎ、走って行ってしまいます。
「稲田先生、甘酒、子どもにいいのですか?」
と、美子が聞きますと、まぁ構わないとのことでした。
しかし、その前に飲んでいましたよ。
「姉さん、お代は誰が払ったの?」
「クリームヒルト」
なんと茜さんは、妹におごってもらっていたのでした。
「まったく……これからは妹におごってもらうことは、無いようにお願いします」
「クリームヒルト、困った姉に無心されたら、私にいいなさい、姉といえどキツく叱っておきますから!」
「わかったわ、美子姉様」
「ねえ、クリームヒルト、あそこにたこ焼きがあるわ、今度は私がおごるわよ」
「みんなも一緒におごってあげる、この茜さんに任せなさい」
わぁわぁ、きぁきぁ、そのうるさい事……
後ろから歩く美子さんの、眉間の皺が深くなっています。
そんな中、美子さんが、
「そろそろ目的をおっしゃったら如何、私と茜姉さんを呼び出して何のようですか、天狐さん」
稲田先生は驚いたようですが、
「九尾を退治していただけたら……」
「貴女のほうが格は上でしょうに……それでもなら代価が入りますよ」
「どのようなものでも」
「一番大事なものとなりますよ」
「……」
「私は別にこの星のものなど欲しくは無いし、なにより、この星の生死を、私は決めることができます」
「はっきり言えば、私が欲しいものは問答無用で手に入りますよ」
「……」
「九尾以外にもあるのでしょう?まぁ、いいわ」
ここで美子は恥ずかしげもなく、大きな声で、
「茜姉さん、先に行っていて下さい、すこしトイレです」
すると、囁くような声が聞こえました。
「私がいたしましょう」
と言って、スピンクスが目立たぬようにしながら、浮き上がってきたのです。
「ミコ様のお手を煩わせる程のことはありません、私が片付けてきますよ」
美子さんが、
「程々に出来る?」
「オフ・コース」
「どっからそんな言葉拾ってきたのですかね……まぁいいわ、参道を外れましょう」
参道を外れ、人気がない場所に来ると、スピンクスが、
「そろそろ出てきなさい、気を使ってあげたのですから」
突然、九つの鎌鼬が襲って来ましたが、スピンクスに吸い込まれるようにして、消えてしまいました。
その後、ある一角の空気がなくなったような……そして禍々しい雰囲気がなくなりました。
「相変わらず凄いわね、どこに放り込んだの?」
と美子が聞きますと、太陽の中心部との返事でした。
「後の手下はどうしますか?」
と、スピンクスが囁き、
「稲田先生、どうしますか?」
と、美子が聞きます。
かなり青ざめた稲田先生ですが、
「この者たちは、元々このあたりの産土神(うぶすながみ)……お見逃しください」
「そうですか、後は任せますよ、ただこの地の稲荷神さん、ここに出てきなさい」
すーっと、小さい白狐があらわれました。
「今回はこの天狐の願いで行ったこと、以後は心してこの地を守って下さい」
頷いた白狐さんでした。
「では行きましょう、スピンクス、ご苦労様でした、たい焼きでもおごってあげましょう」
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