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第一章 転入生
ハードル競技で13秒7……
しおりを挟む席取り合戦の末、クリームヒルトの隣は、佐田さんがジャイケンを勝ち抜いて座っていました。
「本当にさっきはごめんね、私考えもなく……だから謝りたくて、何としても貴女の席の隣に座りたかったの」
「気にしなくてもいいのよ、恥ずかしいことではないし」
「貴女、芯は強いのね」
クリームヒルトは笑うしかなかった……確かに強くなくては、アスンシオンまではやってこられなかった……
「誰でも強くなれるわよ、それより教えていただけると助かるのだけど、稲田先生ってどんな方?」
「私がはいっている同好会の顧問なのだけど……そうね……変わっているわね……」
「あれだけ綺麗なのに、彼氏もいないみたいだし……でも仕方ないか……目がつり目だし……」
「そうだ、変なものが好きよね……きつねうどんとおいなりさんを、いつも食べているし……おあげが好きみたいよ……」
「皆から密かに、狐女史って呼ばれているのよ、もっとも、私もおいなりさん好きだから、狐女になるのかしらね」
狐女史ね……美子様にこんな、いかがわしい女を近づけてはいけないわ……
中学二年といえど超人(ユーベルメンシュ)、状況判断などは素晴らしいものがある。
しかも佳人待遇側女、そのパープルゴールドにグリーンゴールドのラインが入ったチョーカーが、持ち主の警戒感に反応を始めた……急速に空気がざわめいている……
「なんか寒いわ……風邪でもひいたかしら……」
と、佐田さんがいうので、ハッとしたクリームヒルトではありました。
いけないわ……気をつけなくては……魔力が起動してしまう……もっと勉強しなくては……
「気のせいよ、それより次は何の時間?」
「いけない!体育よ!吉川さん、運動着、持ってきている?」
「持ってきているけど……」
更衣室があるのですね、この聖ブリジッタ女子学園山陽校中等部には。
でも……
「これ、本当に履くの?」
学販ブルマに抵抗を感じるクリームヒルト。
そこは白人さんですから、足は長いし、お尻も胸もそれなりに成長が早い……抜きん出てスタイルがいい。
「羨ましいわ……」
クラスメートがまじまじと見ています。
「そんなに見ないで……恥ずかしくなるから……」
ジュニア用ブラジャーをしているのは、クラスの七割程度、まだまだ膨らんでいない胸の持ち主は、結構いますよね……
クリームヒルトはフロントホック……
佐田さんが、「やっぱり外人さんなんだ……」などと差別じみた事を云っています。
とにかく今日は陸上とかで、ハードル競技との事。
中学女子規格の高さ76.2センチ、インターバル8メートル……
よく考えたらクリームヒルト、初めてなのです。
「私、初めてだわ……」などと言いながら、皆の試技をじっと観察していました。
「吉川さん、初めてなの?」
と、女子体育教師が声をかけてきたので、
「そうなのです、出来ましたら、一度手本を見せて頂けますか?」
大人のような応対に、すこし唖然とした顔の先生ではありましたが、「こう飛ぶのよ?」と、飛んで見せてくました。
「できそう?」
「やってみます」
さすがに超人(ユーベルメンシュ)、というよりチョーカー持ち。
何やらナノマシンが助けてくれたような気もしましたが、見事なものですね。
二回ほど皆で走って、記録にトライすることになったが……
14秒1……中学二年の女子としては、歴代記録に入る記録を叩きだしてしまいました。
「すごい!吉川さん、早い!」
歓声が起こります。
こんな状況に、あまり出会ったことのなかったクリームヒルト、なんか嬉しくなりました。
「もう一度走ってみない?」
先生に云われて、チョット気分が良いクリームヒルト、嬉しそうな顔で、
「じゃあ走ってみます!」
超人(ユーベルメンシュ)といえどまだ子ども、眩しいほどの笑顔ですね。
13秒7……
教師は思った……言葉も無いわ……この娘、ヒョットして天才?
そんな教師の考えなど、知ってか知らずか、クリームヒルトはこの体育授業で、クラスに溶け込んだのです。
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