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第四章 チャンドラの物語 魔女っ娘広場の奇跡
ワンプレート、外せば10円
しおりを挟む「突然でごめんなさいね、明日、魔女っ娘広場ってのあるのでしょう?どこから聞いたのか、ヴィーナス様がご存じで、私にどんな物かと、ご下問があったのよ」
「ヴィーナス様が?それって……」
「大変だったのよ、行きたいなんておっしゃって……アナスタシア様に怒られておられたわ」
「とにかく、お荷物など、お部屋にお運びしましょう」
チャンドラさん、侍女モードに入っています。
「別に荷物などもってないわ、個人用の異空間倉庫に放り込んでいますから」
「それより、お腹が減ったわ」
「お好きなものをご用意しております、チャパティ、サモサ、キョフテです、まずはチャイティーなどいかがですか?」
「いいわね♪」
タラにお茶など入れさせて、チャンドラさんは夕食をセッティング、
「お待たせしました、ご用意ができました」
「一緒に食べましょうよ、ご飯は一緒に食べたほうがおいしいのよ♪」
このごろ、やたらと庶民的になっているウルヴァシーさんです。
「ところでウルヴァシー様、明日の魔女っ娘広場ですが……」
タラさんが、出店の話をしますと、
「いいわよ、どのみちもうすぐ賞味期限切れなのでしょう、それに管理人に下げ渡しているし、何の問題もないはずよ」
「じゃあ、明日、魔女っ娘広場に出店ということで」
「私も手伝おうかしら、面白そうだし」
「ウルヴァシー様!」
でも、結局三人で、『迎賓館』はテナントを出したわけです。
小さいお皿に『乾パン』五枚と『ミートメンチ』と『ラタトゥイユ』、ワンプレートでおひとり様1つ。
販売価格は、ダーツで真ん中に当てればなんと『ただ』、そして外れれば10円、子供でも難なく買える値段です。
タラさんが、ダーツ係り。
「さあ、当たればタダよ、美味しいよ、外れても安いよ!さあ、いらっしゃい!」
チャンドラさんは、天手古舞で盛り付け係りをしています。
ウルヴァシーさんが売り子ですが、フロッグの町の住民はウルヴァシーさんが王女ということを知っています。
「王女様が……」
「何を言っているの、私はサムラート様の女奴隷に過ぎないのよ、サムラート様にとっては王族も平民も同じということよ」
「サムラート様は皆さんをいつくしんでいるのよ、皆がサムラート様を信じてくれるなら、あの忌まわしい戦争の記憶も薄れ、このアールヴヘイムンにも祝福をいただけるのよ」
「このささやかな恵みも、皆さんの努力でもっと大きな恵みになるはずよ、今日はその足掛かりができたのよ」
ウルヴァシーさんのこの言葉に、フロッグの住民はサムラートに親しみを感じたようで、迎賓館のテナントはものすごく繁盛したのです。
口々に感謝の言葉を口にし、満面の笑みを浮かべる子供たちに、顔がほころぶウルヴァシーさんを見て、チャンドラさんも嬉しそうですね。
この魔女っ娘広場に、執政官府迎賓館が出店してから、フロッグの住民が執政官府へも親近感を持つようになってきたのです。
翌月の魔女っ娘広場には、執政官府迎賓館の出店は当然、今度は期限切れなどではなく、量の制限もなくなっていました。
徐々に魔女っ娘広場はフロッグの名物となり、いつの間にか観光の目玉になっていくのです。
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