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第二章 ベネデッタの物語 魔法女学校
『いかがなものか』
しおりを挟む「あら、ベネデッタさん、珍しいところにおられるのですね」
と、声をかけてきた女がいました。
ナオミ・ハゲル、アマゾネスの一人、ミトリ・ハゲルの妹です。
「ナオミさんか、そういえばハウスキーパー事務局に勤務していたのよね」
「聞いていますよ、ベネデッタさんの暗い顔の原因を」
「そう、私こんな事は苦手で……どうなるのかと思うとね……」
「そんなに気にする事はありませんよ、皆さん、誤解されているようですが、サリー様ってお優しいのですよ」
「それに今回の話は、ハレムの話が絡むわけではないでしょう、マルスで初めての魔法系の任官課程、設立趣旨の話と思いますよ」
「そういわれると、少し元気が出そうね」
「天下のアマゾネスの一人であるベネデッタさん、下を向いている姿は似合いませんよ」
でも、事はそんな簡単な話ではなかったのです。
一時間後に、ハウスキーパー事務局に出頭したベネデッタにサリーが、
「ベネデッタさん、デモレーの八年制高女の件ですが、今までに無い医療魔法専門の八年制高女とか、まだ任官していない女生徒に、魔法を許可するのは『いかがなものか』、という意見があるのです」
「お言葉ですが、何が問題なのでしょう?」
「任官前の者に、魔法使用を許可した例は無いのです」
「多分エラムの『奉仕の魔女団』を視野に入れての計画でしょうが、奉仕の魔女団員は女官の中より選抜して、ハレム内の実業学校で教育しています」
「曲がりなりにも、ヴィーナス様に身を捧げる誓いを立てた者たち、ヴィーナス様のご命令なら、身も心も命も差し出す覚悟を固めているからこそ、寵妃ではないが、特例で魔法使用の力が、寵妃並みに強化されているのです」
「そしてその力の使い方を、徹底的に学ぶことで、寵妃以上に魔法が使えるようになっているのです」
「その他のエラムの魔法学校でも、基本はヴィーナス様の女奴隷が前提です」
「一応女官補の資格を与えられていますので、もしヴィーナス様のご命令があれば、女官に順ずる行動が要求されます」
「このことについては、制度上拒否は出来ますが、実際は拒否はありえません」
「エラムで一般女官がヴィーナス様のご命令を拒否すれば、不名誉な死を受け入れていただくことになります」
「このことは、メイドの貴女なら理解しているはずです」
「しかしマルスの女官任官課程においては、生徒は任官していません」
「ヴィーナス様も命令はお出しになりませんし、生徒本人も拒否が出来るようになっています」
「医療魔法といえど魔法です、人は簡単に殺せるのです」
「ましてその気になったら戦闘魔法もつかえるはずとのことです、『いかがなものか』というのは、そういう意味です」
「では……分かりました……」
これは駄目と感じたベネデッタ、あっさりと引き下がる気持ちに傾いています。
サリーさんが、
「ベネデッタ・アルクーリ、貴女も献上品になるのですよ、バレアレスの繁栄を、その身に背負っているのでしょう?」
「簡単に引き下がってどうしますか!『いかがなものか』という理由を吟味してください」
「つ・ま・り、『百合の会議』を通るすべがあるという事ではありませんか?」
「とにかく今日は非公式の訪問なのでしょう、確か正式には明日の夕食前でしたね、アポイトメントは」
「私もこの後用事がありますので、明日の夕食前にお待ちしています、できれば有意義な夕食でもとりたいものですね」
サリーさんはこういうと、ナオミ・ハゲルを呼び、
「ベネデッタさんの、ニライカナイでの滞在の面倒を見てあげてください、悩み事もおありのようです」
「軍人さんですから、事務手続きは不得意と思いますので、手助けしてあげなさい」
このように云ったのです。
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