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第三章 憧れのアメリカなのに
魔犬 其の二
しおりを挟む一匹はバーゲスト。
邪悪な精霊が、犬の姿で現れたといわれているもので、イングランド北西部ノーサンバーランドあたりの、黒妖犬といわれるものです。
首輪には鎖が使用されていて、赤い目の黒犬です。
見るからに獰猛です、というより不吉の塊です。
まず誰も寄ってこないでしょうね。
ガルム君のブサカワイイなんていう愛嬌は、かけらもありません。
マレーネさんに云わせると、戦闘モードに入ると、鎖のガチャと引きずるような音がして、黒い霧が漂い出すそうです。
「ミコ様の、やばい方の死神の、霧のミニチュア版ですが、効果のほどは保障します」
この犬、本当にまずいのではありませんか?
もしバーゲストが、本気の戦闘モードに入ったら、万単位で相手を殺せますよ。
「野良アンドロイドが襲ってきても、簡単に返り討ちが出来るはずです」
でも、バーゲスト君、ガルム君とガンの飛ばし合いをしています、仲が悪そうですね。
もう一匹はクー・シー。
スコットランドに伝わる犬の妖精ですが……
これは……犬なのでしょうか……、暗緑色のもじゃお君ですが……
「マレーネさん、牛の間違いではないですか?魔牛とか……」
「牛魔大王なんて、寒いギャグを飛ばす気ではないでしょうね!」
「……」
「やっぱり、夏場におっしゃってくださいね!」
「……はい……」
「とにかく、クー・シーは犬です、特徴は足音がしません」
「クー・シーは、吼えた相手を構成粒子から振動させます」
「もし三度吼えたら、振動崩壊させます、幽子といえど例外ではありません」
「まずないことですが、遠吼えは全方位を対象とします、チョーカーを持つ者は対象外ですが……」
こいつも大変まずいですね、もし町中で三度遠吼えしたら……
たしかクー・シーの遠吼えは、遥か彼方まで届くといわれているはず……
完璧主義のマレーヌさんが、見逃すはずもないし……
ではガルム君は……この際、聞いておかねば……
「ガルムの戦闘能力は、どの程度ですか?」
「ガルムは傑作です、ガルムはエネルギーを吸収するのです、雑食性です」
「生物や有機体アンドロイドなら、血液をエネルギーとみなします」
「残留思念や幽子集合体はそのもの本体を、機械アンドロイドの場合は、力をやり取りする粒子を、たとえ重力粒子から成り立つ生命体がいたとしても大丈夫です」
「万一、相手のエネルギーが特定出来ぬ場合、手っ取り早く相手を食べます」
「ガルムの毛が逆立った状態なら、全方位に対して戦闘体制を取ったことになります」
「この時は生命エネルギー以外の、どのようなエネルギーも併せて吸収します」
「核爆発は勿論、火山などの自然エネルギーなども対象にします」
て、ことは、ガルム君は人類に対しては、吸血生物というわけですか?
「間違いではないですね、人の血は高カロリーの完全食糧ですから……」
「ではガルム君には、何を与えておけばいいの?」
「三匹ともですが、生肉などがベストですが、草でもOKですよ、ある意味、放牧も可能な犬ですから」
「まあ調理したものは避けていただいた方が……」
「ガルムがディアヌに特になつくのは、ディアヌのチョーカーの魔力に自身を守って欲しいからです」
「基本的に三匹の魔犬は、自身の防衛を主人のチョーカーに依存しています。つまりチョーカーを持つ者に対しては逆らえないのです」
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