上 下
34 / 124
第三章 憧れのアメリカなのに

やっとホットスプリング

しおりを挟む

 私たちはバスに乗り込みます、その騒々しい事、キャーキャーとおのぼりさんです。
 ディアヌさんとアリシアさんは、引率の先生ですね。

 ココさんはアリスさんのお目付け役です。
「お姉さま!」なんてね。

 そのころネイサンが、
「やれやれ、おそろしい方だ、我らの力の源をこうもあっさりと無力化されるとは……しかし我らが世界を守るのも愉快なものだ……ミコ様とミコ様から……」

 飛行場につくと、バスの前後の車から、SPもどきさんが素早く警備体制をとります。
「ディアヌさん、ガルムで十分と思いますが?」
「いえ、一般人を守るためのものです、メキシコをお忘れですか?」

「でもM1エイブラムスだけではなく、AH-64D アパッチ・ロングボウまで集まっていますが?」
「ディヴィドソンが合衆国を脅したのです、アリシアの実家は、やることがはげしいですから」
「どのような理由をつければ軍が動くのですか?」

 アリシアさんが、
「ノーベル賞クラスの美人姉妹とそのお友達が、アメリカを観光旅行中に暗殺予告を受ける」
「そのお友達の中には、ハプスブルグ家の者も混じっている」

「この美人姉妹学者は、あのミレニアム問題を解いた天才」
「その上、ロッシチルドとディヴィドソンと法王領の三者から、非公式に警備の申し入れが来ている、そういうことです」

「本当にその程度で?」
「そうです」

 きっとアメリカ政府は、知っているのでしょうね、なんたって『未確認重要事項保護局』なんてものが、国連に密かにあるのですから……いや、あるかどうかは眉唾かもしれませんね……

「でも、このままではマスコミがかぎつけませんか、パパラッチなどが出てくるのでは?」

「マスコミは報道もしないし、情報も買わない、出版も出来ないし……怖いことが起こるでしょう……」
「それにミコ様に動かれると、とんでもないことが起こりますし……」

 なんと申しましょうか、私はどうやら歩く爆弾のようです。
 愛人さんたちと、静かな新婚旅行はどこにいったのでしょう……
 見果てぬ夢……

 こんなことではエラムの方が、まだ自由が利きましたのに……やれやれ……

 ホットスプリング……
 アーカンソー州中央部に位置する、アメリカでも有数の温泉街です。
 シカゴのギャングが、入り浸った街と聞いています。

 やっとやっと、来ました。
 ホットスプリングス・メモリアル・フィールド空港につくと、来た時と同じように、バスと警備の車がわんさかいます。
 信じられないことに、州兵が動員されています、どこまでディヴィドソンはやるのでしょうね……

 バスに放り込まれて、前後は怪しげな車に囲まれ、有名なバスハウスロウを横目で眺めながら、
「ここの建物はバスハウスといって、ふつうの湯船に温泉を張ってはいり、その後はマッサージ、仮眠などして、身体を鍛えるジムがあったりするのよ」
 バスの中で、知ったかぶりをするミコさんでした。

「ほー、それはいい、なまった身体を鍛えたいと思っていたので……」
 ビクトリアさんが喰いついてきました。
 アテネさんの耳が大きくなっています。
 この人も、闘う女でしたね。

 小雪さんが、
「そんな面白そうな場所があるのですか?つれてってくれますか?」
「私も要領が分かりませんので、アリシアさんあたりに連れて貰うことになりますが、一緒にいきましょう」

 ビクトリアさんが、
「小雪さん、それ以上強くなってどうするのですか?」
「ミコ様をお守りするためには、不断の努力が必要、私たちがお守りしなければ」

 アテネさんが、
「強い事に越したことはない、強すぎて困ることはない」
「私はこのいただいた小太刀で、ミコ様に刃向かう者は切り捨てる」
「私は主席相手の戦いで自分の無力を感じた、だから強くなるしかない!」

 アテネさん、お気持ちはありがたいのですが、突然、小太刀など出さないの!
 ディアヌさんやアリシアさんがぶるってしまうでしょう。
 やる気満々のアテネさんです。

 でもアテネさん、ここのお風呂は水着着用、裸でジムには行けませんよ。
 そう言うと見事に落ち込みました。
 やはりなにか勘違いをしていましたね。
 素っ裸でジムでのトレーニングを、するつもりのようでした。

 バスの中で、その様な事がありましたが、私たちは郊外のどこやら知らぬ場所に連れて行かれました。

 ロッシチルドのコテージについたのは夕刻です。
「逢魔が時」です、欧米風で云うとトワイライトゾーンですか。
 昼と夜の狭間に、こっそり滑り込みました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

処理中です...