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第三章 憧れのアメリカなのに
やっとホットスプリング
しおりを挟む私たちはバスに乗り込みます、その騒々しい事、キャーキャーとおのぼりさんです。
ディアヌさんとアリシアさんは、引率の先生ですね。
ココさんはアリスさんのお目付け役です。
「お姉さま!」なんてね。
そのころネイサンが、
「やれやれ、おそろしい方だ、我らの力の源をこうもあっさりと無力化されるとは……しかし我らが世界を守るのも愉快なものだ……ミコ様とミコ様から……」
飛行場につくと、バスの前後の車から、SPもどきさんが素早く警備体制をとります。
「ディアヌさん、ガルムで十分と思いますが?」
「いえ、一般人を守るためのものです、メキシコをお忘れですか?」
「でもM1エイブラムスだけではなく、AH-64D アパッチ・ロングボウまで集まっていますが?」
「ディヴィドソンが合衆国を脅したのです、アリシアの実家は、やることがはげしいですから」
「どのような理由をつければ軍が動くのですか?」
アリシアさんが、
「ノーベル賞クラスの美人姉妹とそのお友達が、アメリカを観光旅行中に暗殺予告を受ける」
「そのお友達の中には、ハプスブルグ家の者も混じっている」
「この美人姉妹学者は、あのミレニアム問題を解いた天才」
「その上、ロッシチルドとディヴィドソンと法王領の三者から、非公式に警備の申し入れが来ている、そういうことです」
「本当にその程度で?」
「そうです」
きっとアメリカ政府は、知っているのでしょうね、なんたって『未確認重要事項保護局』なんてものが、国連に密かにあるのですから……いや、あるかどうかは眉唾かもしれませんね……
「でも、このままではマスコミがかぎつけませんか、パパラッチなどが出てくるのでは?」
「マスコミは報道もしないし、情報も買わない、出版も出来ないし……怖いことが起こるでしょう……」
「それにミコ様に動かれると、とんでもないことが起こりますし……」
なんと申しましょうか、私はどうやら歩く爆弾のようです。
愛人さんたちと、静かな新婚旅行はどこにいったのでしょう……
見果てぬ夢……
こんなことではエラムの方が、まだ自由が利きましたのに……やれやれ……
ホットスプリング……
アーカンソー州中央部に位置する、アメリカでも有数の温泉街です。
シカゴのギャングが、入り浸った街と聞いています。
やっとやっと、来ました。
ホットスプリングス・メモリアル・フィールド空港につくと、来た時と同じように、バスと警備の車がわんさかいます。
信じられないことに、州兵が動員されています、どこまでディヴィドソンはやるのでしょうね……
バスに放り込まれて、前後は怪しげな車に囲まれ、有名なバスハウスロウを横目で眺めながら、
「ここの建物はバスハウスといって、ふつうの湯船に温泉を張ってはいり、その後はマッサージ、仮眠などして、身体を鍛えるジムがあったりするのよ」
バスの中で、知ったかぶりをするミコさんでした。
「ほー、それはいい、なまった身体を鍛えたいと思っていたので……」
ビクトリアさんが喰いついてきました。
アテネさんの耳が大きくなっています。
この人も、闘う女でしたね。
小雪さんが、
「そんな面白そうな場所があるのですか?つれてってくれますか?」
「私も要領が分かりませんので、アリシアさんあたりに連れて貰うことになりますが、一緒にいきましょう」
ビクトリアさんが、
「小雪さん、それ以上強くなってどうするのですか?」
「ミコ様をお守りするためには、不断の努力が必要、私たちがお守りしなければ」
アテネさんが、
「強い事に越したことはない、強すぎて困ることはない」
「私はこのいただいた小太刀で、ミコ様に刃向かう者は切り捨てる」
「私は主席相手の戦いで自分の無力を感じた、だから強くなるしかない!」
アテネさん、お気持ちはありがたいのですが、突然、小太刀など出さないの!
ディアヌさんやアリシアさんがぶるってしまうでしょう。
やる気満々のアテネさんです。
でもアテネさん、ここのお風呂は水着着用、裸でジムには行けませんよ。
そう言うと見事に落ち込みました。
やはりなにか勘違いをしていましたね。
素っ裸でジムでのトレーニングを、するつもりのようでした。
バスの中で、その様な事がありましたが、私たちは郊外のどこやら知らぬ場所に連れて行かれました。
ロッシチルドのコテージについたのは夕刻です。
「逢魔が時」です、欧米風で云うとトワイライトゾーンですか。
昼と夜の狭間に、こっそり滑り込みました。
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