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第一章 未確認重要事項保護局

ミコ様

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 ネイサンがもうすぐやってきます。
 私は一足先に姉の家へ戻りました。
 魔力で一つの部屋を、閉鎖空間にしました、真っ白の部屋には出入り口はありません。

 まぁ結果的に誰も殺していませんし、エールさんは良くやってくれました。
 お茶でも用意して待ちましょうか。

 エールさんが転移してきました。
 ネイサンも一緒です。
「エールさん、ご苦労さま、お茶でもいかが、ネイサンもどうです、ルシファーのお茶ですから毒が入っているかもしれませんよ」
 エールさんが「あるじ様のお手製ですか、光栄です」と嬉しそうに飲んでいます。

 そしてネイサンへお茶を差し出しました。
 貴方、冷や汗というものがでていますよ。

「ありがとうございます」
 手が震えていますが、凄い自制心を、発揮しているのでしょうね、優雅に飲み干しました。

「私に会いたいとか、聞いてあげましょう、でも言葉は選ぶ必要がありますよ、地獄の炎は嫌でしょう?」
 私は微笑みましたよ、でも怖いでしょうね、私の目は笑っていないのですから。

「まずは先程の男が約束を守って、一番大切な物を私に託しました」
 そう云って、うずら卵ぐらいの大きさのダイヤモンドを差し出しました。

「あの男の大切な物とは、こんなものですか?貧しい心根ですね」
 私はそう言うと、ネイサンの目の前で、そのダイヤモンドを指でつまんで、潰して見せました。

「で、お話とは?」
 私は催促しました。
「まず私はルシファー様を、その名でお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「ヴィーナス・イシュタル・アフロディーテ・イナンナ・ウェヌス・アウシュリネ・アウセクリス・ヴァカリネ・アナーヒター・ルシファー・ヒロト・セリム・キッカワ・アスラ、私の名前です、どのように呼んでくれてもいいですよ、ネイサンはどう呼びたいですか」

「できましたら、そのままで……」
「この名前、個人的には好きではないのですがね、この世界では、皆がそう呼びたがりますね」

「ただ、ルシファー様にも仮のお名前が必要かと、女性であられるとは意外でしたが……そこで吉川美子様では、いけませんでしょうか?」
「ミコ?」

「失礼ながら、お名前が必要かと考えられます、そこで茜様のお妹様ということで、アメリカ国籍をお創りします」
「やはり移民の国ですから何かと好都合です」

「おもしろい案ですね、それで出来るのですか?」
「それは確約いたします」

「我々はルシファー様の為に、全力を尽くします、この地球でのんびりとお過ごしくださればと、願っています」
「なるほどね、まぁいいでしょう、その後はこうですか」

「貴方たちは全力で、私をのんびりと生活させてくれる、そして近づくものは排除する、なるべくなら、私に地球についての干渉をさせたくない、なぜなら私という存在は地球の勢力バランスを根本的に破壊する、言葉を変えれば隔離したい。」

「その為には何でもするし、各国政府にも何でもさせる、この辺ですか、えらく舐めてくれますね、終わりにしますか?」

「お怒りはごもっともですが、これが一番収まりが、よろしいかと考えます」
「でなければ、ミコ様を煩わせることばかりが起こります、そのことでミコ様が激怒なさると、どうなるか思い至りました、この地球も終わりになりかねません」
「私は覚悟を固めてここへ来ました、嘘は無しで話しています」

 たしかに、今の私が激高したら、大変な事になるかもしれません。

 ネイサンは言葉を続けます。
「出来ましたら、ルシファー様は日本に戻られ、てのんびりとカレッジ生活を送られたらと考えます、大変失礼ですが、男子禁制の女子カレッジを勧めます、ここまでお美しいと、男がお側に近寄ると不測の事態が起こります」

「貴方も男でしょうに」
「お言葉ですが、我々は先程の事で、ミコ様にお目通り願う時、恐怖が先に来ます、とても良からぬことを考える事は出来ません」

 ネイサンが、「その怖い顔で睨まないでください!」といいます。
 そんなに怖い顔ですかね。

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