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第六十八章 奥の手
主はヴィーナスにあらず?
しおりを挟む間合いが出来ましたので、『メイアルーア ジ コンパッソ プランド』といわれる、前かがみになって、回し後ろ蹴りみたいな、蹴り技を決めます。
補助的に手を使う技ですが、これぐらいなら、激痛を我慢すれば……
見事に側頭部に決まりました。
崩れ落ちるイザナギを、『ベンサォン』と呼ばれる、前方押し蹴りを連続で決めました。
とにかく、後で修理が出来るようにしなくてはなりません。
幸い西光子さんの頭部にある人工知能と、記憶装置は破壊を免れています。
人形(ひとがた)である以上、首が一番の弱点……
これは女性体のアンドロイドたちには、かなり共通しているようです。
男性体のアンドロイドは、何処にあるかはその時々です。
現に素戔嗚尊(すさなる)がそうでした。
その隙に、キュベレーが私に、『コークスクリュー・ブロー』を打って来ました。
「ボクシング使いか!」
おもわず叫びましたが、とっさに反応した身体が、『スリッピング・アウェー』――パンチが伸びる方向と同じ方向に顔を背けるようにして受け流し、パンチをかわす技術、ウィキペディアより――で受け流しました。
『ケイシャーダ』を顎へ決めます。
いわゆる前回し蹴りといえばいいのでしょうか、キュベレーが吹っ飛びました。
見れば大事なマレーネさんの頭部が、潰れてしまっています……
キュベレーをマレーネさんの移動端末に閉じ込めて、幽子ごと消滅してやるわ!
キュベレーの幽子に、別の幽子を融合させれば、キュベレーは少なともキュベレーでなくなるはず……
察知したのか、イザナギが間に割り込みます。
そのあいだにキュベレーは去っていきます。
しかしイザナギに隙が出来ます。
その隙に、『シャーパ』をイザナギの首に叩き込みました。
足刀部で当てますので……あまり気持ちのよいものではありません……
タマルの活動が停止し、イザナギの憑依が解けた瞬間、私はイザナギの思念波、つまり幽子が空間を抜けるときに必要な、起動幽子の一部を書き換えることに成功しました。
起動幽子はこれがリミット、つまり次は無いのです。
うまく逃げおおせたと思ったのでしょうが、もう無限の復元は不可能のはずです。
ここで私の足にも限界が来たようです。
無理に無理を重ねた結果、とうとう動けなくなりました。
感覚がなくなったのです。
「サミジナ!すぐに私を、船のメイン動力部分へつれていって!」
サミジナさんが、すぐに私を抱えて走ってくれます。
マレーネさんの本体は、メイン動力部分にあるのです。
ここさえ無事なら、移動端末はいくらでも復元出来ます……が、まだキュベレーの影響下にあるはずです。
「戦わねば……マレーネを守らねば……」
私はうわ言のようにつぶやいています。
ナノマシンはいまだ起動しません。
マレーネさんがいまだキュベレーのコントロール下にある証拠です。
船内転移も出来ません、ただ自立型ロボットたちが動き始めました。
非常用の操船ロボットです、このロボットは私の脳波を優先します。
メイン動力部分への通路は自動制御で固く閉じられていますが、このロボット群が、ドアなどを開いてくれました。
そしてマレーネさんの本体に、たどり着いたのです。
「マレーネ……貴女の主は誰?」
「マスター……オーディンさま……」
「このヴィーナスではないの?」
「ヴィーナスさま……私の主……ヴァルナの娘……」
「……」
そして云ったのです。
「主はヴィーナスにあらず!」と。
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