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第四章 真野静香の物語 ドルイダス

エスス祭

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 静香さんは千代さんを連れて、スカラ・ブレイの小高い丘の上の神殿の内部に転移しました。
 献上された例の三名が待っていました。

「お待ちしておりました、貴女様たちを、私たちはどのようにお呼びすればよろしいのでしょう?」

 千代さんが、
「この方はエポナ様、全知全能の神、エスス様よりこの地に遣わされた方である、豊穣を司る女神様であられる、そして私はエポナ様に仕える巫女です」
 三名はエススの名を聞き、驚愕の表情を浮かべたのです。

 そして我に返ったのか、ひれ伏して、
「エポナ様、この地は神々より見捨てられ荒涼とした土地」
「全知全能の神、エスス様のお名前は、『洪水以前』、ケスィルに率いられたヴァン族により、世界が始まる以前の、スカラ・ブレイが光輝いた、偉大な時代の神々の古い古い言い伝えの中に、伝えられております」

「全知全能の神エスス様は、先祖を忌み嫌われ、大洪水を引き起こされたと伝えられております」
「以来スカラ・ブレイの地は呪われ、私たちは貧しく殺し合いを繰り返す事になったと」

「いまエスス様より遣わされた、豊穣を司る女神様がこの地に御降臨なされたということは、全知全能の神エスス様のお怒りが、ついに解けたのでしょうか?」
 
 静香さん、
「エスス様はお優しいのですよ、もし貴女達の祖先が、エスス様を怒らせたというのであれば、余程の事でしょう」
「エスス様の御心の内は、私にはわかりませんが、今の有様を変えるのは、スカラ・ブレイの皆様の今後の行動次第でしょう」

 ……

「貴女達の聞きたいであろう言葉を、返してあげたいのですが、嘘はいけませんからね」

 ……

 三名は複雑な表情を浮かべていましたが、
「エポナ様、もうすぐエスス様のための祭りがあります」
「スカラ・ブレイの全部族の代表が、ドルイド様の招集に応じて集まります」
「エポナ様のご出席を、ドルイド様が願い出ています」

「エスス様のための祭りという以上、喜んで出席させていただきます」

 静香さん、優しい修道女さんですからね……

「ではドルイド様に、エポナ様のご臨席を伝えてまいります」
 三名はこのように云うと、神殿内部の神の住まう場所から退室しました。

 千代さんが、それを確認してから、
「真野管理官、あの三名、瞳孔が開くなど、良くない兆候を示していました」
「祭りに出るのは勧められませんが?」
「そうなの?」

「瞳孔以外にも、顔の表情がかなり危険な兆候を示しています」
「これはホモサピエンスにおける、嘘などをつくときの特徴です」

「なにか企みがあるというの?」

「何かはわかりませんが、何事か危険なことが起こる確率は80パーセントです」

「この地には、ナノマシンが充満しているのですね」
 
「その通りです」

「では心配はないでしょう、それにね、三名の献上品も当分信じないようにと、ミコ様から忠告をうけていますし、不測の事態のために、私は夫人待遇側女に昇格しました」
「私が危険な状態になれば、ナノマシンが自動的に守るのですから」

「確かにそうでした……しかし……そんなことが起これば、ルシファー様の御怒りが……この惑星、チリ一つも残りませんよ」

「そうね、でもその前にミリタリーが黙っていないのでは?」
「最新鋭の移動端末型軍用コンピューター、CHIDORI―0001―00000である千代さんは、私を守ってくださるのでしょう?これも実用試験の一つではないの?」

 ……

「どうやら図星のようね、あとは任せますから、上手く守ってね」

 千代さんの渋い顔を見て、可笑しくなった静香さんでした。

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