惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第十四章 川口居留地

極東からの招待

「今一つ、お願いがあります」
「帝国政府としましては、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社主を招待したいのです」
「そこで留学生たちと、面談していただきたいのですが……」

「極東の小さい国へ、私がわざわざと行くのですか？」
「……できましたら……」
　おや、よく我慢したこと……

「上野公使、ご無礼しました、私は人を試す悪い癖がありますので、いいですよ、丁寧に招待されたら、断れないですね……」

「戦争も終わったことですし、少しは私にも、自由な時間がとれます」
「十月一日に、貴国へお伺いさせていただきます、詳細はマッケンジー夫人と詰めてください」

　極東からの招待ですか……明治の日本へ行くのですか、少し興味深いですね。
　その前に、ペテルブルグへ行きますか……

　私がマッハ号で、ロシアに遊びに行こうとしていると、ブロイ公爵がどこで聞いたのか、パリに招待されました。
　すると……オーストリアからも、ウィーンにぜひと……

　結局、パリ、パレルモ、ウィーン、ベルリン、サンクト・ペテルブルクの各都市を歴訪、一気にシベリア上空から清国上空を通過して、ユーラシアを横断、日本の川口居留地に到着、日本滞在後、太平洋を横断、アメリカの中央部のブラックヒルズに立ち寄り、ナンタケット島から大西洋を横断してロンドン着、の世界一周航空路開拓も兼ねているようです。

　随行するのはマーガレット王女、エカチェリーナ大公女、ルイーズ・ドルレアン王女、アリソン・ベル嬢の四人……

　護衛としてワキンヤン婦人戦闘団とブーディッカ婦人戦闘団から二名ずつの四名、あと操縦士が二名、私をいれて合計十一名……

　マッハ号は全長は７５メートル、速度は２５０キロ、乗員二名、乗客十二名、三名の余裕があります。
　荷物はそれほど積めませんが、それでも五トン程度は詰めますので、女たちの膨大なお荷物も、何とか収まりました。

　で、川口居留地ってどこ？

　上野公使の説明によると、日本の大坂が１８６８年に開港し、同時に外国人居留地と定められた、川口町２６区画の事のようです。

　木津川に面しており、対岸の江之子島には去年、大阪府庁者が竣工したばかりとのことです。

　神戸の方に、皆さんが経済活動の拠点を移していく傾向があり、川口はさびれ始めているとのことです。
　で、ここをブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の、日本での拠点としては、とのことでした。

　マッハ号の飛行船用地と、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の専用用地として、隣接地を格安で売却してくれるそうです。

　勿論内部は治外法権、ミュニシパル警察規則というものができたところですが、川口居留地自治会から、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社が来るなら、ぜひ居留地警察を組織してほしい、との要請がありました。

　とりあえずは各国領事館に、警備の人間を増やしてもらいました。
　のちのち戦闘団を、分派しなくてはなりませんね。
　出入りは日本の大阪府の官憲が警備するそうです。

　で、お手数ですがジョン・ロックフェラーさんに、この川口のブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の施設を、当面管理整備していただくようにお願いしておきました。

　電報によると、ほとんどの空き地は抑えたようです。

　また上野公使から、次のような言葉がありました。

　川口の横には、松島遊郭があり、アリアンロッド様にはご不興かもしれませんが、極力ご滞在期間は営業を自粛させますが、お目障りかもしれません、我慢願いたい。

　遊郭？これは面白い……ぜひ見学しましょうね……なんとしても……

　九月の中旬には、マッハ号はロンドンを旅立ち、各地でコンパニオンさんの候補をいやほど面接させられ、これを四人のコンパニオンさんが、蹴りに蹴っていました。

　予定通り十月一日の午後に、マッハ号は川口居留地の上空に飛来したのです。