惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第十三章 １８７５年の戦争

オフレコ会談 其の二

「一つお聞かせ願いたいのだが、先ほどドイツを贖罪のための犠牲とした、と言われたが……なにゆえか……」
　と、ビスマルク侯爵は続けます。

「貴国が優秀だからだろう……ドイツに一致団結されるのは目障りなのだろう……」
「ドイツ帝国は分割する必要がある……そのように云ったのを、女王陛下が聞かれたそうだ」
「私が思うに、論理的過ぎて、説明に時間を要するからだろう」
　ディズレーリ伯爵がさらに答えました。

「贖罪は誰でもよかったのか……」
「そうでもないと思う」
　と、ブロイ公爵が答えます。

「アリアンロッド嬢は、ドイツは女の権利を認めていないと、判断したと思う、英露仏と貴国を比べると、この点が顕著に違う」

「……理解した……理解したが……なぜドイツにそのような大事を開示するのか？」

「ドイツはブラックウィドゥ・スチーム・モービルの株を、所有する気持ちはあるか？代価は高いが……」
「ドイツは分割されないのか……」

「ドイツ帝国は解体する、アリアンロッド嬢が収まるまいし、貴国の少年がしでかした事は重大だ……」
「あの女はこの件を利用して、貴国を糾弾、何が何でも解体するつもりだろう……」
「あれは多分出来レースと、私は読んでいる……」

「自傷か……えげつない女だ……」
「そら恐ろしい……」

「我らが束になっても、この状況になる……」
「そこでだ……ドイツにも、我らの苦労を担ってもらいたい」

「ドイツ帝国は解体されるのに？」
「緩やかなドイツ連邦帝国、つまり神聖ローマ帝国の復活ならどうかな？」
「あの女が了承するのか？」

「アリアンロッド嬢に直談判するのは、ビスマルク侯爵、貴男の仕事ではないか？」
「勿論、神聖ローマ帝国を復活させる以上、オーストリアとの調整も、しなくてはならないと思うが」

「今夜にも会見を申し込んでおく、代価も考慮する」
「一つ言っておく、ドイツは敗戦国、講和の条件は緩めるつもりはない、よろしいか？」
「なるほど、ディズレーリ伯爵は厳しい……」

　この後会食になり、ディズレーリさんが、
「なぜ貴国は、装甲艦ケーニヒ・ヴィルヘルム号の件を知りながら、開戦に踏み切ったのか？」
「それはどういうことか？」

「ほぉ……装甲艦ケーニヒ・ヴィルヘルム号率いる武装商船が、アドリアティック号に夜襲をかけようとした事件ですよ、貴国の海兵大隊を、ブーディッカ婦人戦闘団が逆襲して、壊滅させたと聞いていますが」

「……」

　ディズレーリ伯爵はそれ以上、聞きませんでしたが、ドイツ帝国海軍の軍規は、大したことは無いと判断したようです。