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第十三章 1875年の戦争

オフレコ会談 其の一

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 シチリア戦線と、ヴェルダン防衛線での、婦人戦闘団の活躍は世界の認識を変えました。
 そして私は、幼い男の子のナイフに傷を負いました。
 これはベルリンテロ未遂事件として、大々的に報道されました。

 私の負傷で、ベルリン講和会議は翌日に延期されました。
 しかし、私抜きで緊急会議が開かれました。
 ビスマルクさんが、戦勝国の代表を招待したのです。

 重苦しい雰囲気が流れています……
 ゴルチャコフ公爵が口を開きました。

「アリアンロッド嬢が負傷された……ゆゆしきことである……ビスマルク侯爵にはわからないだろうが、これは世界の行く末に影響する……」
「良い機会である、本日はその対策を討議したい……」

「我がドイツは理解に苦しむのだが……」
「確かにアリアンロッド嬢旗下の、婦人戦闘団は驚異的な軍事戦力とは認めるが……たかが小娘一人、しかも軽傷と聞き及んでいる……」
 ビスマルク侯爵が言葉を返します。

「貴男はアリアンロッド嬢を知らない……」
「なぜ我がロシアが膝を屈しているのを、不思議とは思わないのか」

「なぜイギリスが、なぜフランスがと、不思議とは思わないのか……」
「この戦争が、なぜ起こされたか、理解されていないようだ……」

 ゴルチャコフ公爵がそのようにいいました。

「我がフランスは、本音をいえば、帝政はそれほど望んではいなかった」
「そして貴国との戦いは、まだ時期ではないと判断していた……」

「しかし、フランスは生き残らなければならない……」
「世界の未来は、アリアンロッド嬢にかかっているのだ……」
 ブロイ公爵も口を開きました。

「この戦争は、アリアンロッド嬢が望んだのだ、そして貴国を贖罪のための犠牲とした……」
「カンタベリー大主教の噂はドイツにも届いているはずだ、あれは掛け値なしの真実なのだ……」
 ディズレーリ伯爵が、そのようにいいました。

「すぐには信じられぬが?」
 と、ビスマルク侯爵がさらに聞き返しました。

「アリアンロッド嬢は、突然ジョージアナ女王陛下の前に現れたのだ」
「そして賢明にも、我らが女王陛下は、アリアンロッド嬢を万難を排して引き留めた……」

「あの女は、この世の女ではない……世界を救うように神に云われて、しぶしぶやってきたらしい……」
「我らの世界は、終わりに入っているのだそうだ……しかも……人は種としての寿命も迎えている……」

「ユダヤ人としての私が言うのも変なのだが……神の使い……しかも冷酷無比な……」

「……」

「当初、私もディズレーリ伯爵の話を信じられなかった」
「皇帝陛下も信じられなかったようで、再三確かめようと要求を出された……」
「嫌でも信じる光景を見せられ、そして我がロシアは逆鱗に触れた……」

「バルチック艦隊の最新鋭主力艦三隻を、瞬時に沈められた」
「あの時、必死で嘆願しなければ、バルチック艦隊の全艦艇が沈むところだった」
 ゴルチャコフ公爵が、うめくようにいいました。

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