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第十三章 1875年の戦争

贖罪は終わった

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 その頃、ワキンヤン婦人戦闘団は、ドイツ南部のバイエルンに空輸され、ブーディッカ婦人戦闘団と合流しました。

 またオーロラ輸送飛行団を編成し、フォモール号とギガース号を配属しました。

 以後、この二つの戦闘団と、輸送飛行団を指揮する師団司令部を新設、ノーザンクラウン婦人戦闘師団と称し、クレア准将の指揮下に置きました。

 戦闘師団司令部に直属する、偵察戦闘飛行船中隊として、ネヴァン飛行隊とタテ飛行隊を配属することにしました。
 小さいですが、強力な空中機動兵団です。

 バイエルンで、北部ドイツに進撃準備を整えていますと、ディズレーリさんから緊急電です。
「なんでしょうね?」
 ドイツが講和を申し出てきて、それを受諾したのことです。
 条件も書かれています。

「受諾した?私は聞いていないが、これはどういうことですか!」
 思わず電文をたたきつけてしまいました。

「これではドイツ帝国が、生き残るではありませんか!」
 叔母様からも電報が届きました。

 受諾を了承して欲しい、ヴィルヘルム1世の退位は無条件降伏に等しい。
 これ以上は、ドイツを徹底抗戦に追い込むことになる。
 貴女の目的は達せられた、ドイツは女性の権利を認めた。

 概ねこのような内容でした。

「アリアンロッド様、どうされました」 
 クレア准将が声をかけてきました

「戦争は終わった、ドイツ帝国は生き残った……これでは今後の計画に狂いが生じる……」
「でも戦争に勝ったではありませんか?ほぼ目的は達したのでは?」

「貴女にはすべては語っていないが、世界が生き残ろうとするには、誇り高い頑固者は邪魔なだけ……まだ叩いておかねば……禍根を残しかねぬ……」

 この後、この幽子の世界を、物質世界に置き換えるのです、力技なのです……
 天之御中主(あめのみなかぬし)様の贈り物を活用しての、神からのお仕事……

 多分、今の私の力なら、この世界の人々の幽子を、問答無用で置き換えることは可能です。
 世界の大国は婦人を認めつつあります。

 すぐには男尊女卑はなくならなくても、加速度的に男女同権になっていくでしょう……
 万余の精鋭兵士を、戦場で婦人戦闘団が打ち負かしたのです。
 世界に与えた衝撃は、計り知れないはずです……

 しかしいくら可能としても、私の負担は計り知れない……
 無事に移行させたとしても、私が倒れてしまえば……ヴィーナスネットワークは……

 いや、私を愛してくれた、皆さんが悲しむのでは……無責任とサリーさんに怒られるし……
 下手をすれば、時を共にすると誓ってくれた愛人さんたちは……
 食欲がないぐらいで、大変なことになったのですから……

 まして、男が消えゆく世界に移行するわけですから、ドイツ騎士団の伝統を受け継ぐ、プロイセンのユンカーが抵抗すると思われるのです。
 彼らは誇りの為なら、死をもいとわないかもしれません。

 この世界は、精神の作用がかなりの力を、発揮するようなのです。
 移行の時、強固な精神が集団で抵抗すれば、これはしんどいことになるのです。

 世界を移行させている時に、いちいち説明している時はないし……
 素直な精神なら、なんてことはないのですが……嫌がるものも救うのですから……

 やはり……お手軽にはいかないようです……
 私が頑張ればいいだけですかね……

「仕方ない……贖罪は終わった……血であがなわれたのです」
「何があっても、世界に明日を迎えさせましょう、私は誓約したのですから」

「クレア准将、ジョージアナ女王陛下に、了承したと電報を打ってください」
「さて、ベルリンへ進駐しましょうか」

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