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第十一章 聖夜其之二
クリスマス・イブの夜
しおりを挟むクリスマス・イブの夜は大騒動です。
皆さんタガが外れたのか、女だけですから、かしましいというか、騒々しいというか……
「ご主人様、こちらにどうぞ!」
と、ワインを勧められ、
「アリアンロッド様、お慕いしております」
と、告白されたり、
「全てを捧げます!」
なんて、云う方までいます。
大体、昼から延々と食べていますよね。
とくに若い方たちは、そのスリムな体のどこに、これだけの食材が入るのか……
不思議です、人体の不思議です。
「皆さん、あれだけの菓子パンを食べての、この食欲?」
「はい!」
「良い殿方に嫁ぐには、スタイルが重要ですよ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です!私たちはアリアンロッド様の下された、リングを死ぬまで外しませんから」
雰囲気に酔っているようですね。
「皆さん、ありがたいですが、好ましい相手と幸せな日々を過ごすのもいいものですよ」
「ブラックウィドゥ・スチーム・モービルの娘たちは、幸せになるのです、なる義務があります」
ここでノエリさんが、
「我らはアリアンロッド様にお仕えすることが幸せ、いまが一番幸せなのです」
などというものですから……
「私たちは今が幸せなのです、ここにいる者は、帰るあてなど無いのです」
「ここがなければ、クリスマスも寒さに震え、みじめな夜を送っていたはず」
「どうか私たちを、このまま見守り続けてください」
……もう言うことは無い……なんとしても、この方たちをヴィーナスネットワークの世界へ……
「そうですね、皆さん、力を貸してください、必ず輝ける未来を見せてあげます!」
なんかアドレナリンが……
もう、やってやろうじゃありませんか。
少なくとも男の世界を打破して、破滅の明日を、それこそ破壊してあげましょう。
こうなると、カラオケですかね……カラオケ機器を素知らぬ顔でだしましょうね。
『抜刀隊』なんてと思いましたが……ここはイギリス……
やはりイギリスに敬意を表して、The British Grenadiers――邦訳、英国擲弾兵――でしょう。
Some talk of Alexander,And some of Hercules
Of Hector and Lysander, And such great names as these.
But of all the world’s great heroes, There’s none that can compare
With a tow, row, row, row, row, row, To the British Grenadier.
大雑把に訳すと、
アレグサンダー、へラクレス、ヘクターおよびリュサンドロスの偉大な英雄たち
しかし彼らと言えど、英国擲弾兵に匹敵することがなどできない。
歌いましたよ……すると二番を、イギリスの娘たちが大合唱してくれましたが、アメリカの女たちは特にブーイングです。
で、Yankee Doodle――ヤンキードゥードゥル、アメリカ独立戦争の愛国歌――、今度はアメリカ娘が大合唱……
今度はロシア娘から要求がでましたね。
「アリアンロッド様、ロシアも!」
やれやれ……Солдатушки - бравы ребятушки――兵士達よ、勇敢なる若人達よ、1812年のナポレオン戦争時の軍歌?――でも歌いますか……
これ歌い良いですよ……
最後はわかっていますよ、フランスですよね、これはもう、ラ・マルセイエーズしかないではありませんか。
でもブーディカ婦人戦闘団の軍歌がありませんね……
「皆さん、一つ良い歌があるのですが、今から私が歌いますので、続けて歌いませんか?」
私は歌いました、景気のいい歌、そして軍歌の代わりになる楽曲……
『地上最大の作戦マーチ』……これですよ。
乗りましたね、皆さん……
後日、この歌が、ブーディカ婦人戦闘団の行進曲となりました。
さて、そうこうしていると夜の八時……ペテルブルクの冬宮殿へ行かなくては……
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