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第十章 聖夜其之一

クリスマス休暇は備蓄食料で

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 そうそう、小型の乾パンも大量に用意しました。
 この乾パンの袋と、同数のソーセージ缶、およびオレンジスプレッド、それに金平糖の小さい袋も作りました。
 つまりは自衛隊の戦闘糧食そのままです。

 違うのは、フリーズドライのキャベツの、小さい袋がついていることです。

 一食分をセットにして、小さい箱にいれてあります。
 缶詰は軍用ではなくプルトップです。
 この缶詰のプルトップは、変な馬蹄形というのか、要は中央部に、長方形の板が残る形に、とれるようになっています。

 残った中央部分は、さらに缶の縁についている根本を起点に外側へ折り曲げて、缶の側面中央についている、でっぱりの小さい穴に、引っ掛け止められるのです。

 不細工なマグカップ状になるわけです。

 プルトップの蓋にあたる部分は、中央より折り曲げると、何とか食材を突き刺すことができます。

 一応、ソーセージを全部取り出し、減った分だけの沸騰したお湯をいれれば、大体はうまくスープができるように、調整してあります。

 少しぬるいでしょうがね……
 まぁ簡単にスープができるでしょう。
 なんたって、欧米人は猫舌ですからね。

 ただし少し飲んでからでなければ、フリーズドライキャベツは入れれませんがね。
 さらにはソーセージを一本、刻んで入れれば、なお良しです。

 できるなら、お鍋に入れて作ったほうが美味しいでしょぅが、夏場なら別に水でもよいですよ、基本的にメイドさんたちの非常用備蓄食料ですよ。

 味見してみましたが、なかなかでしたので、婦人戦闘団にも支給することにしました。
 フリーズドライキャベツは今回だけのものですけどね。

 クリスマス・イブの昼前、忙しそうにウェイトレスさんたちが、お食事の準備をしています。
 厨房へ出かけて行って、
「ねえ、皆さん、私が作ったパンなのだけど……食べてみない?」
 見たこともないパンに、大体の方が固まっています。

「あの……アリアンロッド様がお一人で……」
「頑張ったのですよ、クリスマスですからね」
「ここに残っている方は失礼ですが、帰る場所がないと聞いています、でもクリスマスはゆっくりしてください」

「今日と明日は厨房もお休み、食事はチキンとワインぐらいは私が用意しましょう」
「足りなければ、備蓄している戦闘食ですませましょう」

 そう、今はクリスマス休暇で、かなりの方は帰宅されています。
 残っているのはクリスティンさん、マッケンジー夫人、エカチェリーナさん……?

「エカチェリーナさん、ペテルブルグに里帰りをしないのですか?」
「私は夫を亡くした身、イギリスの未亡人……居場所はアリアンロッド様のお側しかありません」
「……ありがとう……」

 さらにはブーディッカ婦人戦闘団の三人の幹部、クレア・ミラー准将、ノエリ少佐、グラディス・アンブラー少佐……

 ノエリさんとグラディスさんは、少佐になってもらいました。
 いまではクレア准将の副官です。
 ガヴァネスとし、『女孺(にょじゅ)』のリングを授けています。
「皆さんも、お昼に食べてくださらない?」
「もちろんいただきます」

「マッケンジー夫人、今日と明日は、屋敷は厨房も含めて、全てお休みです」
「これから明後日まで、飲んで食べて、羽を伸ばしてください、冷凍食品の解凍の仕方は知っていますね?備蓄戦闘食をすべて食べてもいいですよ」

 マッケンジー夫人が、「皆知っています」
「開放しなさい、ある限り食べ放題の飲み放題です、ただし自分の分は調理してね」

 そう、マーブル・ヒル・ハウスには、備蓄戦闘食のほかに冷凍食品も備蓄してあります。
 巨大な冷凍冷蔵庫があるのです。

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