惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第十章 聖夜其之一

菓子パン工場？

　１８７４年のクリスマス・シーズン、私は世界を変えようとしています。
　私はマーブル・ヒル・ハウスの居室で、内緒のお仕事に余念がありません。

　クリスマスの、私からのちょっとしたプレゼントに、菓子パンを作っているのです。

　クリスティンさんやリンダさんが、おいしいと云ってくれましたからね……

　まずジャムパン、イチゴジャムと杏ジャムね、そしてクリームパン、これはカスタードクリームで決まりです。

　ここまではいいのですが、あんパンは受けるかしら……でもいいわ、可愛いお客さんも来る予定ですから……

　そう、実はワシントンＤＣで出会った、三名の大和撫子がこのロンドンに来ているのです。
　アドリアティック号にブラックウィドゥ・スチーム・モービルの関係者として、ロックフェラー夫人が推薦していたのです。

　英国駐箚公使の上野景範さんが、三人のロンドン滞在の間、面倒を見てくれています。
　日本政府としても、ブラックウィドゥ・スチーム・モービルの奨学金を受ける三名を、むげにはできないのです。

　日本人だから、あんパンは口に合うはずです……多分……

　初めて木村屋さんが、あんパンを売り出したのが、１８７４年、明治天皇に献上されたのは１８７５年、三名の大和撫子は、あんパンなんて知らないでしょう……
　こしあんとつぶあんをつくるつもりです。

　メロンパンは紡錘形のもので、白あんのものと、サンライズと呼ばれる、円形のものを用意します。
　あと、チョココルネは絶対にはずせません、銀チョコパンもありましたね。

　カレーパンも外せない……で十種類、１２月２３日から２４日にかけてこそこそと……
　なんせパン工場並みに、一種類１００個を作りましたからね。