惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第九章 軍事組織

ホテルでの出来事

「疲れたわね……」
　ホテルに戻って、ラウンジでナイトティーを、一緒に来た皆さんと飲んでいますが、つい愚痴をこぼしてしまいました。

「ご苦労様です」
　と、アリソン・ベルさんが云ってくれました。

「アメリカって若いというか、理想主義なのはいいのですが、粗野ですね」
「お嫌いですか？」

「理想を振りかざして自分勝手、分かりよいですが……要はパワーが物言う国ですね、やりよいですが」
「……」

「別にアメリカだけの話ではないのですよ、この私もたいして変わらない、若くて？勝手で粗野ですから」
「……」

　でも南北戦争の奴隷解放の理想は、所詮は方便、歴史では綺麗ごとが並び、リンカーンは偉大な大統領となっていますが……

　北部の理想はチャンチャラおかしい。
　敬虔なキリスト教徒が、自己満足のために唱えているだけではありませんか？

　見えない場所、西部ではネイティブ・アメリカンを、どれだけ虐殺しているのか……なんといっても泥棒でしょう？

　他人の土地に乗り込んで、俺のもんだから出て行けといっている……この後、カスターとかいう馬鹿野郎を、英雄と呼ぶのがアメリカ……

　良いとこ悪いとこが混在して、手前味噌に理想に燃える、そしてそれに酔いしれるのがアメリカ……

　もっとも、私もたいして変わらないし、力でこの世界を変えようとしている……のんびりと変革を待っているわけにはいかない…… 

　でも一つ弁解するなら、今、北アメリカ大陸で起こっていることはジェノサイド、私が今から行おうとする、ドイツとの紛争とは違います……でもないか……

　しかし、ちょっとまずかったかしら……
　クレアさんとアリソンさんが、何ともいえない顔をしています。
　フォローが必要ですね……
　二人も話題が変わることを、待ち望んでいるでしょう。

「ピアノが置いてありますね、折角の機会、ピアノを披露しましょうか？私、うまいのですよ」
　フォスターを弾きました。

　結構フォスターの曲は、好きなのですよ。
　『おおスザンナ』、『草競馬』、『ケンタッキーの我が家』などなど……
　さすがにアメリカですね、フォスターを演奏すると、クレアさんとアリソンさんは聞き入ってくれました。

　その後、ショパンの『革命のエチュード』などを……いい曲ですね……

　ちょっと乗ってきましたね……レオン・イェッセルの『おもちゃの兵隊の行進』、最後にガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』を弾きます。
　うっとりと聞いてくれましたね……

　最後の方は、ホテルのお客さんたちも、かなり集まってきて、聞いてくれました。

「アリアンロッド様、言葉もないです、ピアニストとしても超一流ですね！」
「でも最後の２曲は、聞いた事がありませんが……」

「この時代の曲ではないのですよ、曲名は順に、『おもちゃの兵隊の行進曲』、『ラプソディ・イン・ブルー』というのですが、最後の曲は、スタンダードナンバーになる曲です、アメリカの誇る永遠の名曲ですよ」

　うれしそうな顔をしました、単純ですね、だからアメリカが少し好きなのかもしれません。

「本当は私、ギターの方がうまいのですよ、バンドネオンも得意、機会があればご披露しましょう」

「ご主人様は底が知れませんね、何が一番得意なのですか？」
　と、クレアさんが聞きますので、
「数学ですかね」
と、答えました。

「数学？」

「そうですよ、意外ですか？」

「では、苦手な物は？」
　と、アリソンさんが聞いてきます。

　このあたりは遠慮のないアメリカ人です。
　マーガレットさんなら、絶対聞いてこないでしょうに、まあ、多少ご機嫌取りも必要ですから、答えましょうね。

「掃除洗濯は得意ではありません、あと事務処理みたいなこともね、めんどくさい事も本当は苦手です、それから化粧も得意ではありません」

「えっ、男みたいですね」
「そうですよ、だから女が好きなのです」

　クレアさんとアリソンさんが目配せして、
「ではお好きなことをいたしましょう、アメリカに来たのですから、アメリカの女をいかが？」

　で、今夜もホテルの一室でお仕事を……疲れるわ……