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第九章 軍事組織

ネヴァン号離陸

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 一人の赤毛の女性が、こちらに歩いてきます。
「ビニー・アシュモア飛行士です!」
 階級章を見ると大尉です。
 たしか二十五歳と聞いています。

 飛行科生徒の中でも、首席の方ですね、結構な美人さんですが、軍事課程生徒さんですから、色気が乏しいというか……

 背の高い方でかなり筋肉質、醸し出す雰囲気は、ギルベルトさんを思い出しました。
 ひょっとしてレズ?

「ご苦労様、よろしくお願いします」
「アリアンロッド様のご搭乗を歓迎いたします」

 そして、あと二人の乗客にも敬礼をしながら、
「クレア准将、コンパニオン・アリソン・ベル様、ネヴァン号にようこそ」
 そう、この飛行船は、ネヴァン号と名付けられています。

 ネヴァン号のゴンドラは、私たちを乗せて格納庫から自走して、飛行船発着場中央へ出ます。
 一応プロペラを可変して、グランドに押し付けるように停止します。

 副操縦士が、
「発着場中央に停止、ゴンドラは安定状態、ただいまより気嚢膨張を始めます」

 異空間倉庫より、ヘリウムが流れ込んで、気嚢が膨らみ始めます。

「気嚢膨張完了、ヘリウム漏れなし、太陽光発電順調、各部異常なし」
 と、副操縦士が計器を読み上げています。

「では行きますか?まずはマサチューセッツ州ナンタケット島婦人特別自治区へ」
 私はアシュモア大尉に命じました。

「ネヴァン号発進!目的地はブラックウィドゥ・スチーム・モービル社のナンタケット島飛行場」
 アシュモア大尉が命じます。
「上昇開始します」
 と、副操縦士が答えました。

 ネヴァン号はゆるゆると上昇を始めます。
「巡航高度に達しました」
「アイリッシュ海――アイルランド島とグレートブリテン島を隔てている海――に進路を向けよ!」
「アイリッシュ海に、自動操縦装置を設定します」
 ネヴァン号は北西に進路をとりました。

 眼下には、ロンドンの街並みが広がっています。
 ネヴァン号は太陽光発電のみで、四基のプロペラを動かし、時速85キロで巡航を始めました。

「アリアンロッド様……この飛行船を動かしている燃料は何ですか?」
 アリソン・ベルさんが聞いてきました。

「ガソリンですが、試験的に今は太陽光で動いています」
「今回は試験以外は、ガソリンを使わず飛行する予定です、この後アイリッシュ海に着水して、別の燃料を取り入れます」

 ?

「海水ですよ、この船は海水から水素を作り出し、二つのエンジンの燃料とします」

 ?

「二つのエンジンは水素を燃料とする水素エンジンなのです」

 ?

「まぁ見ていなさい」

 ネヴァン号は順調に飛行し、目的のアイリッシュ海が見えてきました。
「海面へ降下せよ」

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