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第六章 ハイティーの招待客
フランスとロシアの思惑
しおりを挟む秘密会が終わり、ハイティーが終わり、それぞれの国の殿方たちは宿舎に……
「ブロイ公爵、私と貴男は何故呼ばれたのか……」
ナポレオン4世の宿舎を訪ねた、ブロイ公爵に問いかけています。
「フランスを、英露の次のパートナーとしてくれたのでしょう……ドイツは呼ばなかった……」
「それがすべてを物語っています」
「しかし、正直な所、貴男は当然として、何故私なのか……」
「……皇帝が必要なのでしょう……共和制ならフランスは不要ということでしょう……」
「私が呼ばれたのも唯一、貴男と話し合えると認められたからでしょう……」
「あの女はフランスが帝政になり、従えといっているのでしょう、さすれば世界支配の一つの椅子を与えると……議論の余地はない……」
「ご存知か?あの女、レディ・アリアンロッドを、あの女はブラックウィドゥ・スチーム・モービルの、実質的な支配者、いままた底知れぬ力を見せつけた……」
「ディズレーリが必死なのは理解できる、あのジョージアナ女王も必死なのだろう……フランスも覚悟を固めなければ生き残れない」
「あの女の冷酷さを見たでしょう、母親の前で、二人の娘を愛人にしているのです」
「しかも暗殺未遂の犯人の件、ロシア皇帝が体面の為に、口をはさままなければ、あの場で撃ち殺していたはず、あの女は恐ろしい……」
「どうしてディズレーリは、仏露を呼んだのか?あの女は、イギリスだけのつもりと明言していたが?」
「怖いのですよ、ひとたびあの女が怒ればそれまで……私なら仲間を探す……」
「ディズレーリと、腹を割った話をした方がいいかもしれんな……」
「マリアンヌ――フランス自身をさす女神――の為には、主義主張は言ってる場合ではない」
ブロイ公爵はそのように断言した。
そしてこちらは、アレクサンドル2世の宿舎……
「ゴルチャコフ公爵……余は……どうすればよいか……正直、判断に苦しむ……」
「陛下……ロシアは選ばれたのです、ディズレーリがですが……この件はイギリスと言えど荷が重い……」
「ともに世界を抱(かか)えないか……そのために、あの女を何とか手なずける力を貸せ、そういっていると推察できます」
「ジョージアナは操れても、アリアンロッドは難しい……」
「知恵も力も貸せ、そして何とか世界を三国で指導しようと、手を差し出した……」
「汝はなぜ、フランスが呼ばれたと思うか?」
「ドイツ対策……」
「ビスマルクか?」
「それはどうでしょう、私が思うに、あの女は帝政のフランスが、ドイツを叩きのめすのを、望んでいるのではと、思えてならないのですが……」
「それは難しいのではなかろうか……ドイツの軍事力は、今のフランスをはるかに凌駕する、我がロシアを除けば、ドイツに単独でかなうものなどあるまい」
「陛下……あの女の云ったことを思い出してください……」
「科学技術の進歩は争いとともに加速され、一発の爆弾で、パリやロンドン、サンクト・ペテルブルグといった大都市が灰燼に帰する、一人として生き残れない……」
「しかし、一方的に使えればどうなりますか……まさか、そこまではしないと思いますが……どんな兵器を持ち出すやもしれません……」
「それに……あの『お茶会』……私なら、指導者をあの場所に放り込んでしまいます……」
「……いわれれば……余も同意するしかないが……三帝同盟――1873年に成立して、ドイツ、オーストリア、ロシアの同盟、普仏戦争後のドイツのビスマルク体制の要、後日、オーストリアとロシアの対立でロシアが離脱する。――はどうする、去年締結したばかりだが……」
「破棄するしかないでしょう……イギリスがうまくやるでしょう」
「ディズレーリは恐ろしいのではありませんか?」
「世界を支配せよといわれても、あの女の意向がその上にある……」
「意に添わぬと、滅亡が待っている……」
「一度、ディズレーリと腹を割った話をしてみましょう」
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