上 下
53 / 156
第六章 ハイティーの招待客

フランスとロシアの思惑

しおりを挟む

 秘密会が終わり、ハイティーが終わり、それぞれの国の殿方たちは宿舎に……

「ブロイ公爵、私と貴男は何故呼ばれたのか……」
 ナポレオン4世の宿舎を訪ねた、ブロイ公爵に問いかけています。

「フランスを、英露の次のパートナーとしてくれたのでしょう……ドイツは呼ばなかった……」
「それがすべてを物語っています」
「しかし、正直な所、貴男は当然として、何故私なのか……」

「……皇帝が必要なのでしょう……共和制ならフランスは不要ということでしょう……」
「私が呼ばれたのも唯一、貴男と話し合えると認められたからでしょう……」

「あの女はフランスが帝政になり、従えといっているのでしょう、さすれば世界支配の一つの椅子を与えると……議論の余地はない……」

「ご存知か?あの女、レディ・アリアンロッドを、あの女はブラックウィドゥ・スチーム・モービルの、実質的な支配者、いままた底知れぬ力を見せつけた……」

「ディズレーリが必死なのは理解できる、あのジョージアナ女王も必死なのだろう……フランスも覚悟を固めなければ生き残れない」

「あの女の冷酷さを見たでしょう、母親の前で、二人の娘を愛人にしているのです」

「しかも暗殺未遂の犯人の件、ロシア皇帝が体面の為に、口をはさままなければ、あの場で撃ち殺していたはず、あの女は恐ろしい……」

「どうしてディズレーリは、仏露を呼んだのか?あの女は、イギリスだけのつもりと明言していたが?」
「怖いのですよ、ひとたびあの女が怒ればそれまで……私なら仲間を探す……」

「ディズレーリと、腹を割った話をした方がいいかもしれんな……」
「マリアンヌ――フランス自身をさす女神――の為には、主義主張は言ってる場合ではない」
 ブロイ公爵はそのように断言した。

 そしてこちらは、アレクサンドル2世の宿舎……
「ゴルチャコフ公爵……余は……どうすればよいか……正直、判断に苦しむ……」

「陛下……ロシアは選ばれたのです、ディズレーリがですが……この件はイギリスと言えど荷が重い……」
「ともに世界を抱(かか)えないか……そのために、あの女を何とか手なずける力を貸せ、そういっていると推察できます」

「ジョージアナは操れても、アリアンロッドは難しい……」
「知恵も力も貸せ、そして何とか世界を三国で指導しようと、手を差し出した……」
「汝はなぜ、フランスが呼ばれたと思うか?」
「ドイツ対策……」

「ビスマルクか?」
「それはどうでしょう、私が思うに、あの女は帝政のフランスが、ドイツを叩きのめすのを、望んでいるのではと、思えてならないのですが……」

「それは難しいのではなかろうか……ドイツの軍事力は、今のフランスをはるかに凌駕する、我がロシアを除けば、ドイツに単独でかなうものなどあるまい」

「陛下……あの女の云ったことを思い出してください……」
「科学技術の進歩は争いとともに加速され、一発の爆弾で、パリやロンドン、サンクト・ペテルブルグといった大都市が灰燼に帰する、一人として生き残れない……」

「しかし、一方的に使えればどうなりますか……まさか、そこまではしないと思いますが……どんな兵器を持ち出すやもしれません……」
「それに……あの『お茶会』……私なら、指導者をあの場所に放り込んでしまいます……」

「……いわれれば……余も同意するしかないが……三帝同盟――1873年に成立して、ドイツ、オーストリア、ロシアの同盟、普仏戦争後のドイツのビスマルク体制の要、後日、オーストリアとロシアの対立でロシアが離脱する。――はどうする、去年締結したばかりだが……」

「破棄するしかないでしょう……イギリスがうまくやるでしょう」
「ディズレーリは恐ろしいのではありませんか?」
「世界を支配せよといわれても、あの女の意向がその上にある……」
「意に添わぬと、滅亡が待っている……」

「一度、ディズレーリと腹を割った話をしてみましょう」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...