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第六章 ハイティーの招待客
テロ未遂
しおりを挟むこの時代『Xクラブ』――19世紀後半に存在したクラブ、目的は専門的な科学の実践のためにロンドン王立協会を改革することであった。1870年代と1880年代にはクラブのメンバーはイギリス科学界で突出した立場に立った、ウィッキペディア参照――なるのもが存在しています。
1874年の六月の初めの夕刻、この方々がマーブル・ヒル・ハウスにやってきたのです。
男子禁制のこの屋敷に、むさい中年のおっさん。
場違いこの上なしですが、なんせジョージアナ女王とプリンセス・マーガレットの口添えが表向きの名目です。
実際はディズレーリさんの要求です。
私が、『Xクラブ』のメンバーの質問に、お答えする会だそうです。
さすがに今日は、大人しくしなくてはいけないようで、マッケンジー夫人がピリピリしています。
秘密結社『黒い未亡人(ブラックウィドウ)』のメンバーが、全員そろっています。
この会は非公開になっていますが、かなりの招待客が来られています。
しかも非公開とは名ばかりで、なんとデイリー・テレグラフ紙、タイムズ紙、マンチェスター・ガーディアン紙の編集長がいます。
やってくれましたね……ディズレーリさん……しかし、確かに、この首相の作戦に乗る必要がありますね……むしろ、お膳立てに感謝すべきでしょう。
招待客は多士済々、ナポレオン4世までがいました。
好青年ですね、なるほど出来の悪い息子たちばかりの女王陛下ですから、この青年、可愛いのでしょうね。
さらに、アレクサンドル2世がいたのには驚きました。
アレクサンドル2世の次女のマリアは、女王の次男のお嫁さん、三女のエカチェリーナは女王の五男のお嫁さん、嫁姑は仲が悪いのですよね……
それに花嫁たちの父である、アレクサンドル2世が皇帝の娘として、二人を長男の嫁より上位におけと、要求したのです。
当然、女王はお怒りになりロシア皇帝とイギリス女王は犬猿の仲……なのに良く来たものです……
五男夫婦さんが来ているわけですか?
おやおや……アレクサンドル2世の随行員にナロードニキ主義者――当時のロシアの反政府運動の一つ、後々ロシア革命につながっていく。――がいるではありませんか……
皇帝官房第三部――ロシア帝国の秘密警察――は、やはり役立たずなのですね……
これでは、暗殺未遂が起こるわけですね……
結果的には、アレクサンドル2世は暗殺されるのですが……しかしこの皇帝は見込みがあるのです……
農奴解放をしてのけた男ですから……
とにかく、ここでテロなど起こされてはたまりません。
私はつかつかと歩み寄ると、アレクサンドル2世に会釈した瞬間に、後ろ近くに控えていたナロードニキ主義者の右肩を手刀で砕きました。
この男、モデル95・ダブル・デリンジャーを隠し持っていました。
というより、今まさに発射しようとしていました。
カランとデリンジャーが落ちます。
私は唖然としている皇帝官房第三部の職員に、こういったのです。
「しゃんとしなさい、これでは役立たずではありませんか!給料泥棒とあざけられますよ」
「とにかく暗殺未遂犯です、ここでやらかそうとしたのです、この男に、朝日を浴びさすことは許しません」
そして犯人に、
「覚悟の上の事でしょう、失敗した以上、自決しなさい」
真っ青な顔をして私をみます。
「やれやれ、死ぬ覚悟もなく、人を殺そうとするのですか?」
しかしここで助けるほど優しくないですよ。
この男は、のど元を過ぎれば何とやらタイプです。
禍根は絶つに限るのです。
私は落ちていたデリンジャーを拾うと、その男に向けました。
この時、アレクサンドル2世が、
「レディ・アリアンロッド、この男は当方にお任せ願えませんか?」といいます。
「……」
「ロシアの面目です」
「そうですか……」
私はデリンジャーを、アレクサンドル2世に渡しました。
「感謝する」
ここまですべてロシア語です。
あまりこのイギリスで、王族はロシア語はしゃべれないと思いますのでね……
皇帝官房第三部の職員が、犯人を引き立てていきます。
なんせこれはロシア皇帝の使節団の内ゲバ、スコットランドヤードの出番はなしです。
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