36 / 156
第五章 黒い未亡人(ブラックウィドゥ)
英雄、色を好む?
しおりを挟むリンダさんは、二日に一回はやってきます。
どうやら、叔母様もマーガレットさんも、公認しているようです。
クリスティンさんにも懐いて、まんざらでもないようなクリスティンさん。
この頃は、二人一緒に、私は勉強を教えています。
算数は、分数ぐらいは解けるようになりましたね……
リンダさんにも、クリスティンさんにあげた文具一式をあげました。
この頃、マッケンジー夫人も、リンダさんが来ることには何もいいません。
私とクリスティンさんが、ふしだらな仲というのは、マーブル・ヒル・ハウスの使用人で、知らぬものはいません。
あまりに堂々としているので、またしている程度に、なってしまったようです。
そのふしだら女の中に、プリンセスが混じってはいけないのでは?
「ねぇ、マッケンジー夫人、私たちはふしだらな女ですから、プリンセスはこの屋敷に、来ないほうがいいのでは?悪い評判が立ちますよ?」
「女王陛下のご指示ですから構いません、そのおっしゃっておられる、『ふしだら』はご承知です」
「そうですか……」
そんな会話の後、急にマッケンジー夫人は真顔になると、
「……レディ・アリアンロッド……マーガレット様に、冷たくなさらないで、いただけませんか……」
「でも、あちらが冷たいのですよ……私は鏡みたいなものです、親しみを示してくれる方には、そのように接しますし」
「レディ・クリスティン・ハワードとは、鏡の関係というわけですか?」
私は苦笑いするしかなかったですね……
「辛辣ですね、でもそうですよ……互いに求め合っているのですからね」
「……でも、主従関係がおありのようですが?」
「まぁそうですね、すべてを預けてくれていますので、守らねばならないのです、代価は互いに支払っているわけです」
「代価?」
「代価です、これ以上は聞かないでくださいな、私は嘘はつけないのです」
「言葉には魂が籠るもの、濁るのは避けたいのです」
「……」
「レディ・アリアンロッドは、そのように云ったのですか?」
「はい」
「……私もリンダと一緒に、お伺いいたしましょう……」
「向こうは嫌っているのでは?」
「鏡と云ったのでしょう、嘘はつけないとも……」
「こちらが親しく頭を下げれば、ということですね」
「それはどうかと……」
「どういうこと?」
「レディ・アリアンロッドは、とにかく人を近づけられません」
「親しくされているのは、レディ・クリスティン・ハワードさんを除けば、リンダ様だけです」
「私が思うに、お屋敷を砦となされているようです」
「私たちが人を近づけさせないのを、利用しておられるような気がして、ならないのですが」
!
「かかわりを持ちたくない……そうです……かかわりを持たせなくてはならない……」
「向こうは嫌がっているのだから……これは向こうの思惑通り……」
「マッケンジー夫人……突破口が分かった……お母様の喪服時代を終わらせたように、黒い未亡人(ブラックウィドゥ)のヴェールを、取ってもらいましょう……」
「良くわかりませんが、逃げようとするレディ・アリアンロッドを、引き留めればいいのですね?」
「そうです」
「レディ・アリアンロッドを、女と考えるから難しいのでは?」
「私がお側近くで観察させていただくと、女々しいところはなく決断も早い」
「しかも言葉に二言は持たれないようです、さらに女性がお好き……美女には少々だらしない……」
「冷酷と優しさを、公私で使い分けられておられます」
「このタイプ、英雄といえるのではありませんか?」
「ただ、スケールが把握できませんが」
「スケールは多分、桁が違うでしょう、しかし……そうです」
「たしかに貴女の言うとおり……英雄、色を好む……」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる