惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第三章 ブリタニアの膝元で

女王陛下の姪はアリアンロッド

「私を知っていたのですか……」
「最初はわからなかったですが……良く観察させていただくと、文献どおりの方、分からぬものは、愚かというものです」
「……」

「こういってはなんですが、貴女がどのような位の方であれ、私には関係がない事、臣下でも国民でもないのですよ」
「それは……分かりました……」
「方便として、陛下とつけさせていただきましたが」

「とにかく貴女を、何と呼べばいいのでしょうね……」
「そうですね……私は数々の名を持っていますが……ここで名乗るわけはいかないし……」

「リンダさん、私をどのような者に見ましたか？ 」
「悪魔……」
「リンダ！」
　女王陛下がたしなめます。

「まぁ、そうですね……ブラックウィドゥですからね……アリアンロッドとでも言いましょうか？」
　ケルトの女神の名でも、言っておきましょうか……

「レディ・アリアンロッド、お顔を見せてくれませんか？」
「私は白人ではありませんよ、貴女たちは人種偏見がおありでしょう？」
「……」
「まぁ、いいでしょう、ヴェールを取ればいいのですね」
　私はヴェールを取りました。

「綺麗……肌も真っ白……白人ではないの？」
　リンダさんがうっとりと、云ってくれました。
「そうですか、お礼を言いましょう」

　女王陛下が、
「お約束した屋敷は、すぐに手配しましょう」
「それまで、プライベートのゲストとして、ここにいらしてください」
「お付の侍女の方も、お部屋を用意いたします」

「……」
　私が黙っていると、リンダさんが、「ぜひそうしてください」と勧めます。

　女王陛下が、
「レディ・アリアンロッド、ここは私の願いを聞いてくださいな、この後、お話がありますし」

「この方と、野宿でもしようかなと、思っていたのですが……」
「野宿！とんでもない、とにかく泊りなさい！」
「リンダ！すぐにこのご婦人がたの部屋を、用意するように伝えてきてください」
　リンダさんが走っていきました。

「レディ・アリアンロッド、侍女が来る前に、お顔をお隠しください」
「お肌の色は、私の見る限り問題ありませんが、失礼ですが、イギリス人には見えませんから」

「私は陛下を何と呼べばよいですか？」
「……難しいですね……失礼ですが、叔母と呼んでくれますか」
「それでは立場がないでしょう？」
「構いません、気難しい女ですから、私は」

　ここで私は少し笑いました。
　この方、ちょっと気に入りました。

「叔母さま？この私の叔母さまですか？」
「叔母様の姪は好意を持ちましたよ、これがどういうことかはわからないでしょうが、世界は救われるかもしれませんよ」

　あっ、私、何を言っているのか……これ、あの方の思惑……不用意に口は開かぬほうがいい……
　そもそも、下手に介入すると、私以外に『父と母』も試されているのですから……
　情は移らぬほうがいい……仕方ない状態になるのがベスト……

「失礼ですが、侍女の方の名前は？」
「お言葉を返すようですが、この方はレディ・クリスティン・ハワード、私のレディズ・コンパニオンをしてもらっています」
「ご主人さま……」

「叔母さま、レディズ・コンパニオンです」
「……分かりました……」