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第三章 ブリタニアの膝元で
母の願い
しおりを挟む「私は、命じられることは好きではありません、私がこの世界程度の者に、命ぜられるとはね……」
「拒否しましょう、これ以上の問答は不愉快です、ではごきげんよう」
私はなんせへそ曲がり、上から目線の者には、特に手ひどく反発してあげますよ。
そもそも、ここで関わり合いを持つことは、ろくなことになりません。
クリスティンさんと転移しようとすると、手をしっかりと握られて、
「非礼をお詫びいたします、しかし子を思う母親の気持ちと、ご理解くださいませんか?」
「貴女にも、母はおありでしょう?」
一瞬、『神産巣日(かみむすび)』神様を思い浮かべました、一度だけ手鏡に垣間見えた母……
「母……ですか……私は母の胸の温かみは知りません」
「ただ抱かれているのは、理解していますが……」
「……苦しい記憶を……ごめんなさいね……でも、私はなんとしても治してほしい……」
「私ではないのです、愛する子供たちを……お願いしたいのです」
「お願いを聞いてくださるまで、この手を離しません!」
「……手は切り捨てればいい話……」
そうですよね、いざとなればこの世界、消してしまわなければならないはずです……
あってはならない世界なのですから。
この時、誰かが私の背後からしがみつきました。
瞬間、フリーな手の肘を、後ろに突き出して、当身まがいのものを軽く繰り出しました。
そのまま、掴んでいた手首を軽くたたきます。
私としたことが、後ろを取られるなんて……
ナノマシンに頼りすぎていたようですね……
不覚でした。
少女がうずくまっています。
「こんなことをすると、命がなくなりますよ、今回は大目に見てあげます」
「ほぅ、貴女も血友病ですね……思うところ娘さんですか、かわいそうに……」
「子供は産まないほうがいいでしょうね……男の子なら、血友病でなくなりますから」
「……」
母親の方が、「せめてこのリンダだけでも」と、懇願されました。
「私はこの世界の人間ではありません」
「治してもいいのですが、私にも守らなければならないルールがあるのです」
「神様か悪魔かは知りませんが、そのルールを教えてください!」
「お母様!その女は悪魔です!そのようなものに聞いてはなりません!」
リンダといわれた娘が叫びますが、聞く耳を持たぬようです。
「貴女の一番大事なものです、それを代価としなければならないのです」
「でなければ、他の者たちにたいして、公平でないことになりますので……」
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