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プロローグ 『ゆらぎ』の中から
『時』の捻じれ
しおりを挟む『時』が捻じれている……これが本来の姿……
ここには原因も結果も存在しない、ただ束縛があるだけだ……
『天之御中主(あめのみなかぬし)』神は、この『時』が俯瞰できた。
多くの世界が『時』にぶら下がっている。
あるものは、加速度的に分裂していく……その世界の住人が選択行動を起こして、世界が分岐したのだ……
多くの平行世界に、同じ人物が生きている……いや中には死んでいる者もいる……
そして急速に数が減少していく世界もある……生物が死滅し始めている世界だ……
さらに『欲界』が荒廃してきた。
当然のように『色界』も荒廃してきた……
しかも宇宙の狭間に、滅亡したはずの、『デーヴァ神族』の膨大な幽子が漂っており、その中に、起動幽子がいくつかあったのだ。
これが『下天』の隣に、雄の優位の世界、彼らの理想の世界ををつくりあげてしまった。
さらにまずいことに、神の娘を作りし時に、娘に与えるべく、幾多の消え去った惑星の過去を元に、『時』の集積として作り上げた歴史、惑星アース史とも呼ぶべき歴史を、物質の世界に作り上げてしまったのだ。
それは欲望まみれの世界、『時』の影響をうけ、循環を繰り返す……その影響は絶大で、ついに『欲界』が『下天』に変貌し始めた……
『欲界』が荒廃してきた根本原因……
『天之御中主(あめのみなかぬし)』神も、さすがに困惑した……
困惑という『有』にとらわれたことに、さらに驚いた……
すべてが有にとらわれ、無に戻っていくのか……この私も……
『時』に埋没して、『消滅』から『調和』に至ることができなくなる……
現れた世界は、かなり雄の優位の世界の世界ではあったが……
しかし、『高御産巣日(たかみむすび)』神と『神産巣日(かみむすび)』神の二柱が、大いなる力を発揮して、何とか封印することができた。
そして、再びその世界は現れた……
この世界は幸いなことに、雄の優位性が薄い、いわば失敗ともいえる世界、しかし捨て置くことはできない……
この時、『天之御中主(あめのみなかぬし)』神も、予想しなかったことが起こった……
現れた世界は『蓬莱』呼ばれたが、これを神の娘が自分の欲する世界に作り替えたのだ……
『欲界』が再び、一時的にしろ、荒廃が清浄に戻った。
テラ歴で九十年近くがたった……
そして再び、第二の蓬莱があらわれようとしている……
『蓬莱』よりも好ましくない状態で……
『天之御中主(あめのみなかぬし)』神は、ため息をついた。
するとさらに『有』にとらわれた……
『無色界』も澱み始めた……
『天之御中主(あめのみなかぬし)』神はすぐに、『有』を払拭(ふっしょく)したが、なにか三千世界の限界を感じた。
潮時という言葉が頭に響いた。
さらに『無色界』の澱みが加速された……
自らが『有』に影響され始めている……このままでは三界が崩れる……
『天之御中主(あめのみなかぬし)』神は、意志を凍結した。
『高御産巣日(たかみむすび)』神と、『神産巣日(かみむすび)』神の二柱は、力を合わせて『無色界』を支えたが、かなりの無理があり、さすがの二柱も余力がなくなった。
二柱は原因が分かっていた、『欲界』の荒廃である。
というより、復活した『デーヴァ神族』と、その作りし世界がもたらす荒廃であると……
これが『天之御中主(あめのみなかぬし)』神の困惑を誘ったのである。
が、いかんともしがたい状況である。
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