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第四十八章 悲嘆のエネルギー
ローマ・レムリア帝国
しおりを挟む一月後のある日、私はフォロロマーナに浮かびあがりました。
多くのローマ市民は今こそ、私、ウェヌスの祝福の元にあると確信したようです。
四人の男が私に向かって跪きました。
「マルクス・ディディウス・セウェルス・ユリアヌス、西のカエサルとしてヒスパニア、アフリカ方面を統治しなさい」
「ルキウス・カルプルニウス・ピソ・カエソニヌス、東のカエサルとしてアエギュプトゥス方面を統治しなさい」
「デキムス・クロディウス・アルビヌス、西のアウグストゥスとしてガリア、ブリタニカを統治しなさい」
「ガイウス・ペスケンニウス・ニゲル、東のアウグストゥスとしてシリア、アシア方面を統治しなさい、さらにプリンケプスとしてイタリア本土も任せます」
こうしてテトラルキア、四帝統治体制が成立しました。
イタリア本土は、このウェヌス教団領として、ローマ帝国のプリンケプスが統治することになりました。
ここを統治する者が、四帝の中での覇者という事です。
プリンケプスは、ウェヌス教団の承認が必要となっています。
そして四帝のなかで、その優位性をみとめられるのです。
正式にローマ皇帝とは、プリンケプスをさすことになります。
私は人々に向かって語り掛けました。
「ローマ市民は私の腕の中にある、良きローマ市民には私の祝福があろう」
「良きローマの男には、その勇武の力を後押ししよう」
「良きローマの女には、その貞淑を愛でよう」
「私を信じるならばローマを私は愛そう」
すごい歓声が聞こえました。
その後、各地の代表が、私がいる観覧席の前で挨拶をしてくれ、捧げ物を献上してくれました。
もっともウェヌス教団に、直接献上品を出せるのは四つのローマ帝国と二つの王国、つまりヌビアのメロエ王国とエチオピアのアクムス王国だけですけどね。
寝室頭のルキナさんがとても忙しそうにしています。
ここでも献上品とは、美しい女奴隷さんのことなのですよ……
サリーさんに、なんて言い訳すればいいのか……
挨拶もひと段落、休憩にはいります、私は隣のプリンケプスに声をかけました。
「この世界の名を決めなくてはね、何といたしますか?」
「エラムとしたい、女神ウェヌスはメソポタミアの出自と聞く、私はそれを称えたい」
プリンケプス、東のアウグストゥス、ガイウス・ペスケンニウス・ニゲルが答えた。
エラム……どうしてこの名……
「私は女神ウェヌスの啓示で、軍団はセプティミウス・セウェルスを撃破できた」
「その女神はメソポタミアの出自、はるかな昔に栄えたといわれる、メソポタミアの伝説の国家の名を継承し、女神ウェヌスを称えようと思う、当然の事だ」
……エラム……私の故郷……惑星エラム……
「女神に感謝を込めて、ウェヌス教団を国家の母、婦人を守る教団として、娘が二人以上生まれれば、必ず一人を巫女とする」
「女神は数々の名をお持ちだが、その黒髪をたたえ、黒の女神と称えたい……」
……黒の女神……
「女神イシスは私の姉……私は一つ位を下げたい……黒の女神はイシスの事……その黒の女神の頼みにより私はローマを救うために降臨した……」
私は何を口走っているの……
「私は黒の巫女と名乗りましょう……それゆえ……ウェヌス教団では名前に矛盾がある……貴方は教団名を、なんと名づければ良いと考えますか?」
返事は分かっているのですが……聞かずにはおれなかったのです。
新しい皇帝は少し考えて、
「尊く犯すべからず何物にも代えがたい……神聖教……これがよろしいかと考えます」
惑星エラムに神聖教……
さらに皇帝はフォロロマーナに集まったローマ市民に向かって、
「ローマの建国神話はレムノスより始まった、数百年を経てローマは神に見捨てられかけていた」
「今、黒の巫女様のご降臨を賜り、ローマは新しい時代に入った」
「我らはそれを記念して、自らをレムリアと呼ぶ事にする、栄光あるローマはレムリアとなり、再び長き年月、栄えよう……黒の女神様と黒の巫女様のご加護のもとに!」
ローマ・レムリア帝国が成立し、世界の事はエラムと呼ばれるようになり、そして神聖教が成立しました。
そういえばこの星は、惑星エラムと良く似ているのです。
私はついに一旦戻ることしました。
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